第2章 視界から呪いへの鎹
『ひ、人前で何を……っ、』
「ばあちゃん、これで恋人って認める?それともさ、目の前でまぐわらないと駄目?恋人じゃないって言っちゃう、恥ずかしがり屋のハルカにはそこまでしたらゆでダコ案件だと思うけれど?
……結構、激しいよ~?」
「……いえ。今はきっと若気の至りで"お遊び"でお付き合いされているんでしょうが……早めにお別れになってくださいね、両家の為にも」
既にゆでダコばりに赤いような気がするし、心臓がばくばくといっている。繋いだままの手が汗だくなのは私のせい。
悔しそうな表情に変わった祖母は肩を落として、玄関へと入っていった。その後を慌てて追う龍太郎。
取り残された、手を繋いだままの私達。
そっと空いた手で自分の口元を隠して、俯いた。
「クックック…ここまでやってやれば流石に信じてくれたでしょ。そう簡単に手は出して……、ん?キミ、どうしたの?」
声が途中からこちらに向けられている。多分こっちを向いてるんだろうけれど私は繋いでない手で自身の唇に触れた。
悟の方はまだ見られない。
『……初めてだったんだけれど…、』
家族のセキュリティが高いという事はそういう事。
私のファーストキスはこの手汗でぐっしょりとして気持ち悪い状態の、繋いだ先に居る男が相手だった。
「え、マジ…?僕が奪っちゃったカンジ?」
困惑する声が頭上でして、ぺちん、という音。私が叩かれた訳じゃない、悟がデコなり頬なりに蚊でも止まってそれを自分で叩いてるんだろうけれど。
緩くなった手から自分の手を引っこ抜いて私は玄関に入ると、あとからやってくる悟。
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その後、寛げるようにと通された一室では少しだけ距離を置いて座って。
座卓に居る悟と、そこから離れた畳の上で三角座りをする私。なんとも言えない空気が漂っていた。
「そのー…ハルカ、ちゃん?」
『事前に何も言わずにああくる(キス)とは思って無かったし、まだ頬の方がマシ。信じられない……始めての相手くらい好きな人がよかったのに、ほんっと信じられない…』
「ええ…でもぉ……」