第10章 末裔の貝殻は開くのか?
うん、この顔というか面影……──。
あっ、思い出した。高校生の文化祭の時に告白されて、私もちょっと気になってた先輩だったからオッケー!って付き合ったのは良いけれど翌日にはスタンド攻撃(※兄貴)受けて別れた先輩じゃん……。
私が過去を思い出すのに黙っていたから少し困った顔をする先輩…いや今は従業員の人。
「あのー…、」
『…あっはい!このまま写真撮れるんで!お願いしますね!』
通常の接客態度。あの様子だとバレてないな、うん。携帯を渡して看板の所までちょっとだけ走る。
悟の側のかばんちゃんに近づく状態で私達は写真を撮ってもらった。
やや俯き気味に携帯を返してもらって、私達は纏まって行動をする。あまり一緒にいると思い出されてしまうかもしれないし、第一皆が居るとは言え一応はデートという名目で来ているし…。
昔のこと、考えてもしょうがない。別に本格的に好きになる前に別れたってだけの関係だし……そこはシスコンな兄に感謝かも。
虎杖が指差して白黒のかの有名な動物を指した。
「あ、パンダ先輩」
『わー、パンダ先輩めっちゃ笹食ってるじゃん、笹好かんって言ってなかった?』
「カルパス切れて仕方なしに食べてる感じね。今掛け持ちのバイト中なんじゃないの?」
「お前らパンダ先輩の事パンダ先輩って言うなよ」
気だるそうに笹を食いまくるパンダを見て一斉に2年の先輩と重ね合わせる私達。
私や悟もだけれど皆ごそごそと手に携帯を握りしめ、各々にカシャカシャ写真を撮っている。どのタイミングで撮ってもだるそうで面白い。
楽しげにパンダだパンダと笑いながらカシャ、と音を立て、私の側に立った悟がぼそり、と囁く。
「ハルカさっきの人、めっちゃ見てたけれど知り合いだった?」