第10章 末裔の貝殻は開くのか?
「みたらいと先生は今からデートだから忙しそうですもんねー!」
「え、何?暇なら今から行く所に着いてくる?」
悟の提案に静まる人々。
えっ今から行く所って今から私達デートだぞ?何を仰るの?悟を見上げるとうさぎのようにぴょんと跳ねて喜ぶ虎杖と釘崎。
「「行くーっ!」」
『えっ私でさえ向かう場所も知らないのに皆行くんかい!』
これが工場見学とか博物館だとかそういう勉強になるような所なら分かるけれど。
私の態度を見て、伏黒は私から悟へ呆れた視線が向かう。
「え、先生みたらいに行き先も言って無かったんですか?」
「うん!当日までのお楽しみって事で!あ、野薔薇ヒールのある靴は止めときなー、行く場所的に転ぶかもしれないし」
私が履いているのは靴底は盛ってあるけれど歩行に安定した靴。一方釘崎は接地面積が少ないヒール。
女子同士互いに視線を合わせ、一旦靴を取り替えて戻って来た釘崎。
デートというか一年担当含め全員で普通に遊びに行く感じだな、というワケで私達が向かった場所は……。
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『うーん、この獣臭!』
あちこちに子供向けのイラストの動物、入園前に置かれた顔出しパネル、馴染みのない巨大な植物、漂う獣の臭いや時折聞こえてくる聞き慣れない奇妙な鳴き声。
動物園とか久しぶりだ。なかなか来ることないもんなー…。
入園してすぐ、写真用の看板が設置されている。人気アニメとのコラボ看板らしく虎杖がはしゃぎながら看板を指差した。
「けもフレじゃん!写真撮ろうぜ!ほらほら、全員!ホラッ!」
撮るのかよー、と言いながら結局看板側に寄ってく釘崎と先にサーバルちゃんの隣をキープしてる虎杖。
ノッていかない伏黒を悟が看板までぐいぐい押してるので私は携帯を手に取った。
『私が撮ってグループLINEに送るよ、悟もそのまま写りなよ』
「ッス!よろしくー、次先生とみたらいのツーショット俺撮るから頼むよー」
『ん、よろー』
私が携帯をカメラモードにして構えようとした時だった。
ふと隣に従業員が立ち止まって手を差し出す。私はシャッターを押す間もなくその従業員を見て硬直した。
あれ、この人……見たこと、あるぞ…?
「お客様、お写真でしたら僕が撮りますから一緒に並んで下さい」