第10章 末裔の貝殻は開くのか?
82.微裏
タクシーから降りて、寮近くまで酔っ払った悟に肩を貸しつつ歩かせて来たけれど、とうとう悟の脚がもつれ出した為に私は背負う決心をした。天才最強の呪術師でも千鳥足にはなるものなんだな、と悟の唯一の部分を見られた気がしてちょっと人間味を感じる。けど、肩を貸してる時にも感じたけれど男女差というか体格差もあって結構重い。
とろんとした目元を覗く眠そうな白い睫毛は伏せられてはまた持ち上げられて青い瞳をちらつかせる。
サングラス外れそうだな……と、一度外し私の胸元にそのツルを引っ掛けた。おぶっている間にカシャーン!と落としたら大変だ。結構悟、ブランド物を着ていたりするから値段がえげつないものかもしれない。
空みたいな虹彩がしぱしぱとしてる。寮の入り口でへたりこむ悟の近くで私は悟を覗き込む様にしゃがんだ。
『はぁー…、うん。特別に背負うから。私の背に乗って』
「……ん、ふふっ…ハルカ~…キミったら僕の事背負えるの?ポキッって背骨折れちゃわない?」
背を向けてやれば後ろから抱きつくように腕を回される。
たった一杯だけれど呼気からは酒臭さが僅かに感じられた。
『背負えないほどひ弱じゃないし。問題なのが身長かなー…っと!』
両膝裏に腕を回して一度全身を揺すって整える。よし、イケた!身体の強化は多少ではあるけれど使ってる。
ふふん、と私よりも背が高く体重もある彼を背負えたって事にちょっとだけ感激しながら、私は部屋へと確実に進んでいく。
さり気なく後頭部ですりすりされてるのは部屋での甘えん坊モードになりかけてるんだろ、部屋まで待って欲しいんだけど。人に見られたらどうすんのさ。
……なんて時に限って人に遭遇するのが私なもので。
「あ……」
たまたま通りすがりの伏黒に見つかってしまった。
私(と、背中で頬擦りしつつ半分寝てる悟)と伏黒は一時停止する。そりゃあするだろうね。
先に口を開いたのは伏黒。ちょっと気まずそうに指をさすのは私の肩を枕にしてる悟だ。
「その荷物…じゃねえや、五条先生外で寝てたんで?」
『寝てたってか、私と家入さん京都校の歌姫先生とでお酒飲んでたらさ。悟が乱入してきて私のお酒飲んじゃってのコレよ』
「あー……」