第10章 末裔の貝殻は開くのか?
ややキレ気味な歌姫をまあまあ、と言葉だけでなだめ(悪化してる気がする)ひとつ空いてたカウンター…私の隣に座る悟。
昔やらかしたのは違いないんだろう、と両端の雰囲気の違いを見て、取皿の串から抜いた残った数口のねぎまの一つを箸で摘む。口に運ぼうとすれば横の人物が片手で私の手を引いて、ぱくりと食べられてしまった。
『フリーダムすぎる……留守番も出来ぬというのか、この28歳児は』
「ねぎまも良いねぇ、僕次はももが良いなー!」
『うわっ、介護始まった!』
右手で悟に食べさせながら、左手で伝票のバインダーに手を伸ばす。まあ軽く食べて飲めたし、ちょっと色々話出来て楽しかったし。次こそは悟を完全に誰かに押し付けて面倒を見てもらおう。
隣の席でゴト、と重い音。振り返れば私がまだ数口しか手を付けていないミドリを悟が飲んでいた。
おしゃれなバーであればグラスで判別出来たろうに。トッピングのまっかなチェリーもあって、悟にはメロンソーダーにでも見えたのかもしれない。
「んっ…?ほう、炭酸抜きメロンソーダーかな…?」
『あっ…!ウン、ソダネー炭酸抜キメロンドリンクダネー……』
そっと悟から引くように、硝子の側に寄る。それを見てさり気なく歌姫も硝子に寄った。女3人身を寄せ合う、耳打ちのし合い。3人で悟に聴こえないようにこっそりと話す。
『(……で、私のインアルなミドリを飲まれたんですが悟って酒駄目なんじゃなかったでしたっけー?)』
「(全自動だったな、さっきのは。しかも結構な量飲んでなかった?)」
「(下戸だぞ、五条は!暴走しないとも限らないでしょ!どうすんの?)」
やべえよ、やべぇよという空気の中平気そうに見える悟。別にすぐに効果が出るってわけじゃない、のかな…?
3人固まって見てるのを、悟は視線を感じてこちらを見ている。