第2章 視界から呪いへの鎹
大きい手でしっかりと指一本一本が絡められている。振りほどこうとしようなら簡単には解けなさそう。
屋敷まで、いや門まで結構距離があるのにそんなに離れた位置から手を繋ぐ必要、あるんだろうか。
「ねぇねぇねぇ、ハルカってさ今まで何人と経験…いや、付き合った?この際だしさ、オセーテオセーテ」
『そういう事ずかずかと聞くのが良くない点だと思う……、ゼロだけれど』
「ゼロ?はーん?ふーん…」
思い返せば、色恋沙汰にはいつも兄と父が居た。妨害だ。気になる人が居れば調査し、威圧感を浴びせる。父に似て兄も腕っぷしが良かった。不良って訳じゃないけれどシスコンではあった。
家族に大事にされた、だからこそのゼロだ。告白してきた男子も翌日にはごめんなさい、と去っていく。恋愛から程遠い青春だった。
『うちのセキュリティがね……厳しくて…』
「ここではないどこかを見ている目だ~……」
ふぅ、とため息を吐いて進行方向を見る。脇道からの呪いを悟はどうやってか捻って祓ってしまった。
それすらも無かったように、普通に会話が続いた。
「じゃあ僕が最初って事か…」
『調子乗ってない?聞いてきたのは経験のって話でしょ?ゼロって事で、付き合った人数なら2人、告白した翌日に速攻別れた。
別に悟さん、ここにいる間仮の恋人といってもそれ以上まで行かないでしょ?』
「……ソッカー」
空いた手でサングラスをかちゃ、と掛け直して、私の反対側…、右側を向いている。
そんなに私はスタイルが良い訳でも、可愛いだとかそういうんじゃないから、こういう顔の良いやつは私に手を出さないとは思うけれど、出されたものを何でも食うようなやつなら話は別だ。
『無いでしょ?』
「……」
『怪しいな、別室で過ごす?別室ならそういう手出しも無いでしょうし』
出さないとは思うけれど、保険のようなもの。というか、プライベートが欲しい。
そんな私の提案に悟はははは、と笑う。
「別室ならあの青年が来ると思うけれど僕は別室で寝れば良いって事かねぇ」
『うわぁ……マジかぁ…仕切りとかあるかしら?』
「あったらおかしいじゃん、それは取っ払おう」
にっ、と笑って私を向いて、もしかしたら私は本当の危機に晒されているのでは?と悟った……。