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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第10章 末裔の貝殻は開くのか?


両面を見てしっかり馴染んでいるのを確認してから、手の傷は癒やしておいた。

『はい、今なら呪われた血液も付加させて硬質さをもたせた呪具になるんです!切れ味も抜群!』
「あーっ!散髪の音ーっ!」

めちゃめちゃノリ良く悟ははしゃいでいる……なんだよ散髪の音ーって。
シャキシャキと音をさせて見せ、私は繭を切り裂いていく。厳重な拘束であるのにとても軽く切れていき、パラパラと落ちていく白髪。
そして回りの先祖たちが制止するのを中断し、今度はざわざわと騒ぎ出した。

"やめろ…っ!リョウコを開放するな!"
"封印は解いてはいけないのに!どうしてこの末代は分かんないのかなーっ!"
"もう終わりだ……領域の終わりだ…"

口々に言ってるのが様子がおかしい。
悟を視線を合わせて互いにしぱしぱと瞬く。

「なんか怯えてない?ハルカママって変わった術覚えてるってわけじゃないよね?」
『そこは私も呪術を知らない状態で死んじゃったから、母の術式とか分からないんだけれど…、と』

表面が硬質化され、内側は割と柔らかかった式髪の繭。
ぱらぱらと落ちたその白銀の鳥の巣の中央に立つ女性。肩を一度落とし、片手で自身の顔にかかる布を指先で持ち上げた。

──顔面蒼白。唇は死者そのもので鮮やかさはない。開いた瞳は瞳孔が開いている。
けれどもその顔は確かに私の母、リョウコだった。母はにっ!と明るく元気に笑う。その明るく元気な笑みには懐かしさと毎日見る悟を重ねる程に無邪気で。

"久しぶり、ハルカ!ここに来ているという事は私のあらゆる努力も虚しく一族が続いてしまったって事だね?"

『……やっぱり、そういう事だったんだ…お母さん』

私から見える機会を消し去って、非術者のままに残し、恋愛をさせないようにしてそのままゆっくりと滅びる事を選んでいた。
それをした当人からの言葉に肩を落としていると悟はぽん、と私の肩に手を置いた。振り返れば元気そうな悟。同じ笑顔でも悟の笑顔は今の私を肯定してくれる。

「でも、呪術師の道を選んだことで多くの人が確実に救われていく。実際にハルカは何人も救ってるだろ?それは春日の一族の……お金の為じゃなくて、ハルカの根本的な術師になる理由…生きるためにさ?」
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