第10章 末裔の貝殻は開くのか?
さらりと急にそういう事を突っ込んでくるものだから、私は片手で顔を押さえて呻く。
悟にそう"好き"って言われる事が嬉しい。白くなる事は喜ばしくないと思っていたけれど、この人のおかげで好きになってしまいそう。
クスクスと悟は笑って私の頭を少しだけ撫でて。
見上げれば優しい表情で。優しい言葉を期待すればそれはいつもの悟らしい"そういう所"な発言で。
「ほらほら~!いつまでも格好良い僕にきゅんきゅんしてないのっ!ベッドの上でいくらでも下半身の方をキュンキュンさせてあげるからちゃっちゃと領域展開しに行こうよー!」
『そういう所だぞ!!急にそういう事言う…あーっ!もう!そういう所だからなっ!?』
あっはっは!と楽しげに笑ってる悟に頬が膨らんでたのに気付き、私は制服に着替えに椅子から立ち上がった。
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高専内のとある建物の中。
コンコン、とブーツのつま先で床を小突き、開いてたドアを閉めに行った悟を待つ。
コッコッコッ、と踵を鳴らして私の側にやって来た、いつもの上下黒に、サングラスの悟。
『あの空間、目疲れないの?私の先祖うじゃうじゃいるじゃん』
目が良すぎて疲れやすいだろうに。ひとりひとりの持つ呪力は100%だというのならそれらが見える悟には疲れそうだけれど。
彼にはアイマスクを私は勧めたい所だけれど、悟はちょっと首を傾げる。
「んー?だってお母さんにご挨拶するのにアイマスクじゃ失礼だろ?もちろん対面時にはグラサンも外すよ?」
『え、そういう所は常識的…』
「ここで犯してやろうか?」
これ以上は言えないか、と眩しい笑顔で犯すと言った悟から視線を外して、私は集中する。
別に祓う相手が居ずとも使って良いのがこの領域展開。確実な死から遠ざけるためのリセット。
両手の全ての指を組み、祈るように。
『──集大成"鎹"』
そうして私は昨日振りの、悟をまた連れての領域展開をして先祖達へと会いに行った。