第10章 末裔の貝殻は開くのか?
一度トイレに行った時にすっきりした表情と下半身の収まりを見て私は何も突っ込めなかった。ただ、今晩はその分ネチネチと攻め立てられる可能性があるんだけれど……今は昼、夜は夜で考えよう。
そういった家事を終わらせた後にもう一度向かい合って座った。洗い物とか終わった後だけれど、飲み物が欲しいのでオレンジジュースが二人分注いである。
悟は私の髪を指差した。
「ハルカのその髪、ほとんど見えないけれどわずかにしか地毛が残って無いんだ。その地毛の残り分食らったらどんなにハルカが元気でも死ぬぜ?そういうトリガーなんだから」
『……うん。だから領域展開をしろって事だよね?』
頷く悟は、人差し指の関節で軽くサングラスの位置を治してオレンジジュースを一口飲む。
私も釣られるように飲んだ。こってりした昼の後のオレンジジュースは凄くさっぱりしてて美味しい。もう一度私はグラスに口を着けた。
「僕としてはハルカのお母さんに挨拶しとこうかなってね。10回のデート後に籍を入れるんだ、あっという間だよ?
きっとオマエを心配しながら死んでしまったんだ、死後も安心させて娘を領域内で援護させられるようにあの特殊な拘束から助けてやろうよ」
昨日見た、変わらない光景。
私はグラスをゆっくりと置いて頷き、縋るように悟を見つめる。
『一緒に来てくれるって言うのね?』
「うん!挨拶するってさっき言ったでしょー?制服を着たら善は急げ。外ですぐにその白髪化をリセットしようね」
にこにことした悟は手を伸ばす。
その手は私の髪に触れて、さらさらと手の平の中の髪を見つめている。
「……でも、ここまで白に染まったキミを地毛に戻すのってちょっぴりもったいないなって思うかな」
『ん?なんで?呪力が溜まった状態を解消するから?』
そのリセットをするための領域展開を悟はもったいないというから、私はてっきり100%にかなり近い(98とか99くらい?)状態のこの呪力量の事を言っているのかと思った。
悟は首を横に振って、自身の頭を指差してる。
「今のハルカと俺、お揃いだろ?」
『あー、確かに。お揃いだね』
「ハルカの髪ってさ…結構手入れしてる分、白っていうか艶があって星屑っていうか銀色?みたいでさー…白銀って言えば良いの?俺は好きだよ?」