第10章 末裔の貝殻は開くのか?
「五条…?お前、怪我人にナニしようとしてんだ?」
「げぇーっ!早いお出まし!あっいやまだしてないっての!……っちぇー、もう少しだったのにさー」
「チッ…ここはそういうホテルじゃないんだ、部屋に帰ってからやれ、クズ」
すたすたと室内に足を進める家入と、陽の光を浴び開放感を得ていた五条の悟くんはモンスターボール……定位置にしまわれていく。
はぁ、と安心した私はため息を吐くしか無かった。
「ハルカ、部屋で仕切り直ししようか!」
『まだ言うかっ!
だが断る、シャワー浴びたりご飯食べたりそっちを優先したい』
実際、昨日は朝食べてから何も食べていない、それに気が付いて私がその一言を発すればお腹が便乗するようにぐう、と返事をした。
ふたりから目を反らすように窓辺を向き唇を噛み締めてそっと手で顔を隠したけれど聞こえてしまってるからもう遅い。
笑い声を聴きながら、私はベッドから脚を出す。もう部屋戻ろう。
「だっはっはっは!大きなお腹の音ねぇ~!」
『チッ、笑いすぎでは!?』
立ち上がった瞬間に爆笑していた悟はスンッ…と真顔になって黙り、前かがみになっていた。
あ、こいつ…と察した私はさっさと自分の制服やウエストポーチを回収していく。家入も腰に手を当て、悟を見て先程と同じ様にとても冷たい視線を送っていた。
「ハルカ、服も良いけど変態五条も回収しとけよ」
「やばい…彼シャツの威力やばすぎるんじゃないの?悟くん元気になっちゃうねー?」
制服のスカート部分のみを引っ張り出し、医務室のカーテンを引いてその裏でそれだけを履く。シャツよりは丈があるから見えない。このまま全部着替えるにも制服には呪具の包丁で何度か刺された大穴が開いてるし……。
靴を履き、前かがみで特定箇所の魔物を抑え込む悟を放っておいて(戻るよ、と声掛け=部屋で試合続行)部屋に戻る前に家入にぺこりと頭を下げた所、家入が顎で悟を指したので私は首を振った。