第9章 五条求婚する
「そんなんで良いの?簡単すぎない?火鼠の皮衣とか各地に散らばったクリスタルとか7つのドラゴンボールだとかおやじのいこうだとかマスターソードだとか、そういう厳しめの条件じゃなくて、たった10回程度のデートで良いの?」
『レア感はおやじのいこうよりもデュプリケーターに替えとけ…じゃなくて。その……ね、』
この前のデートがすごく楽しかった。10回は流石に多いかな、とも思ったけれども多めにしたのは悟が競るように数を減らすかもと見て多めにしたワケで。いつもの調子なら9回!8回!…6回でどうだ!って来ると思ったんだけれど。すんなりと10回で許可されてしまっている。
それはそれで楽しい時を過ごせる想い出の回数が増えるから嬉しい誤算だ。
『この前のお寿司屋とか、スイーツ巡りだとか。楽しかったからそういう思い出を作らないままで五条家に入るのはもったいないかなって。
……わがまま、かなぁ?私の提案は…、』
もちろん、籍を入れたとしてどこか出かければ良いけれど、今は今で楽しい出来事を積み重ねたい。
……ってめちゃくちゃ我儘だっただろうか、とサングラスをした目元を押さえて椅子に座ったまま俯く悟を見る。相当深く考えてる、ような気がする。
「キミー、そんな可愛い事素直に言えた子だっけ?」
『別に提案飲まなくたって良いよ?4年後まで待てるんだったら。私としてはそっちが一番良いけれどなー!』
そっちの方が焦らずにもっと長く互いを知れるし。
悟は首を横に振ってその提案を拒む。
「しますします、デート10回でもなんでもしますって!……へへっ、」
ガガガ、と椅子の足を押し、悟は椅子から立ち上がると上半身を起こした私に抱きつく。私はその悟の背に腕を回してぎゅっと互いに抱きしめあった。
「好きだよ、ハルカ。愛してる」
『うん、私も悟を愛してるよ』
まだ生きていられて良かった、後悔の中で死なずにいられて良かった。この幸せを噛みしめるように、そして生にしがみつくように悟にきつく私は抱きついた。