第9章 五条求婚する
一番立派な建物でやってしまった破壊。でも一応は別荘地内の建物全て現在は持ち主はおらず。
開けるのを頼んだ手前、真希はパンダをフォローした。
「はぁ…まあ、ここらの別荘地持ち主も手放してるから破壊しても良いだろうけどよ、」
薄暗い室内がドアの無い玄関から丸見えだ。
もう管理されてない別荘、電気も通ってない。おまけに殺人のあった場所……そんな場所を買い取る人もなく、窓はコンパネで塞がれている。
おそらくは台風対策とかしたままに放置されてたんだろう、庭の錆びた物干し竿なども縛って建物の側に寄せてあるし……。
それぞれ明かりになるものを持つ。
奥から、横からひたひたのしのしと形状様々であろうやつらが迫ってくる音。音で寄せられたのか春日故の呼び寄せかは知らないけれど建物へと歓迎している様で。
シャラ…、と音を出し真希は呪具を手に構えた。
ここに来るまでは長物を使っていた所、それをパンダに渡し、逆にパンダから渡されていたのは"遊雲"という武器。
「ハルカは両手で明かりを着けてな!ヤバイ時は一応戦えるだろ、手が塞がって居ても!」
『了解!』
床や天井を照らしながらくるくると回転して投げられる懐中電灯を私はキャッチする。それでこの日中の日差しも夜の月明かりも入らない空間を両手で照らした。
シャラ……ゴッ!ガッ、
流れるような動きで呪いに強力な打撃を打ち込んでいく真希。
「ふんっ、建物にみちみちに籠もりやがって…!」
"ギャアァァ!"
「まあこんなに詰まってんだ、当たりだろうよ」
ドッ、バキッ!ゴッ!
間合いを詰めては圧倒的体差で蹴散らし、左右の手からの暴力で確実に祓っていくパンダ。
奥から早速やって来た異形を真希とパンダが蹴散らしていく。相手の動きは分かりやすくまっすぐとこちらにやって来るから照らしてるだけの私でも動きが分かりやすかった。
「"ぶっとべ"」
"ウギャゥ…、"
手前から奥へとうめき声が去り、奥でドン、ガシャァン!と激しい破壊音。
狗巻も寄ってきたものを祓っている。片手に懐中電灯を2本持ち替え、フリーになった手で狗巻に触れる。
「しゃけ、高菜」
狗巻自身の持つ明かりが、まっすぐと先程吹き飛ばした方向を照らしていた。奥ではかすかなガラスの音。外の帳が降りてなお漏れる、僅かな明かりが差し込んでる。