第8章 スキルアップ
じっと私を覗く青は澄んでいても優しくもあって荒々しい事を私は最近知った。今は獣染みた青がギラついてる。
『悟…、』
「ほら、まずはお風呂からだよ?お風呂って言っても髪とか洗ったら時間無いからね?旅館じゃなくてえっちする為の施設なんだからさ…」
引かれるままにさっき覗いた浴室に近付いて、さくさく脱いでいく悟。ゆっくりと脱いでる私を脱がせに掛かった。
楽しげだ、遊びでやってる。
『だーっもう!自分で脱ぐからぁ!……あんたは奪衣婆かっ!』
「こっちは早くおっぱいに挟まらせて欲しいんだけれど!」
『アッただの乳離できてない28歳児だったわ』
素肌になって…体を清めて。
裸のままに横抱きに悟はベッドに私をそっと降ろした。フカフカの枕に頭が埋もれそう。肌の隠しようのない部屋の明るさと雰囲気に脳が麻痺したのか、それとも期待が上回ってしまったのか。どきどきとしてゆっくりと覆いかぶさる悟から目が離せない。
一度悟は舌舐めずりをして私の片手を取る。その私の手の平に頬ずりをした。
「ハルカ。俺のこと最低な男って思ってる所、あるだろ?」
すり…すり。伏せられた白い睫毛が上がる。青がこちらを向いていた。
頬ずりしていた動きが止まったので、触れられたままの手の中で私は悟の頬を撫でる。
『そうだね、女の子とどれだけ遊んでたんだろうって不安はある、けど最低な男って括りからは片足くらいは抜けたんじゃないの?』
「10代の頃から遊んでたけれどさ……本当に関係は全部切ったってば。片足だけじゃなくて俺はもうハルカ一筋なんですけれど?」
くすりと笑った、携帯でずらりと暴言が並ぶメッセージアプリ。人数数えれば良かったかもだけれど、それはそれで絶望する。とにかく少なく見積もって10人は居たはずだ。
それらの女性関係を一気に切って私に絞ったというのはにわかには信じられない。もしかしたら何人かキープしてるかもしれないって疑いの心がある。
──どうして。
どうして悟は、モデルでも女優でも最強でもお嬢様でもなんでもない私を選んだのだろう。春日だからって事なんだろうか?希少価値があったから?
頬を撫でる手を止めると、またいつの間にか伏せられていた睫毛が上がった。
ああ、そうだ。私は悟に好かれている自分に自信が持てないんだ。