第8章 スキルアップ
悟に見つからないようにしなくては私で遊ばれる可能性がある。あんなもの挿れられたら困る。戸棚をそっと閉じ、ルームサービス等が乗ってるファイルをベッドに腰掛けて見始めると、悟は鼻歌交じりに小さなテーブル(ガラスの座卓)の前に座った。
ポケットから何かと取り出して、聞いたことのある曲をハミングしてる。なんだっけ?とファイルをまた1ページ捲りつつ私は記憶から思い出そうとした。
悟はさっきのベッド横にあった小さなバスケットを持ち出してる。あの中に入ってるのはコンドームのはず…。
「フン、フフ~フフン♪」
──ポケットから安全ピン。
何が始まるんです?とルームサービスにしては食事が豪華なページを閉じて悟の行動を眺める。
なんとこの五条悟、針をバスケットから取り出したコンドームの中心目掛けてプスプス刺してるではないか!
『…はぁ!?』
……おい!なんつーことしてんだ!仰天してルームサービスのファイルを床にバサ!と落としてしまった。
そして流石に曲というか、テーマソングも思い出した。その頃には悟もハミングからしっかりと口ずさんでいた。
「でっきるーかな♪でっきるーかな♪さてさてフフー♪
ワクワクさん!今日は何を作るのー?今日はねーゴロリ、人間を作るよー!人間を作るにはねえ、10月10日掛かるんだよ、ゴロリ!」
『って子作りじゃねぇか!悟何やってんの!?』
最後の一枚をぷすーっ!と中心にジャストミートさせた悟はにっこり笑って振り向いた。
「今なら良いでしょ?何日も後にするよりもリスクは低いし、デキても僕はいいんだよね」
つまりは全ての避妊具を台無しにして、今からリスクある行為をしようとしているって事。
私は前から言ってた。高専に入ったからには卒業して学歴を取得したいと。私は悟を愛してるし、今は時期が早すぎるからいずれは一緒になるのも良い。けど、今妊娠などしていたら学校どころじゃない。
『あのさぁ…っ』
「オマエだけに押し付けないっての!お腹にいる間はどうしようもなくてもさぁ…負担は俺だって請け負うから」
呆れるような表情をして小さな音を立てて置かれた安全ピン。
ベッドに腰掛ける私の左手首をそっと悟は掴んだ。温かくて大きな手は少しだけ汗をかいている。
片手でサングラスを外して、穴を開けて使用が出来なくなったコンドームの山の近くに置いた。