第8章 スキルアップ
「ハルカがちゃんと学歴は取りたいって言うからさ、家族計画は後回しにしてるけど結婚については言ってないでしょ?結婚自体はいつだって出来るよね?なんならこの後のデートに指輪作りに行っても良いんだよ?それとも指輪の前に婚姻届取りに行く?」
『まって、そうやってがんがんに畳み掛けないでキャパオーバーだから…今日は無理、事前に予告してから言って』
片手で顔を抑え、もう片手を悟を制止させようと向ける。
初めて言われた時から心の奥底にしまい、時折取り出していた悟の早すぎるプロポーズ。向き合わずに後回しにし続けた結果だった。急に押し寄せる悟からの愛情の形。
嬉しいからこそちょっと顔が見せられない。それこそお酒を飲んだみたいになってるはずだから。
店主がはは、と笑う声に少しばかり驚いて顔を上げた。
「五条さん、今回本気なんですねぇ!」
「ちょっとー!それは雰囲気的にナシだよ、親父さん」
「おや、失礼しました」
む、この店主色々知ってそうだな、という所でコト、とお寿司の乗った板を置く。皿じゃないコレをなんと表現すれば良いのか……、ガリとかもりっぱ寿司にあるような、ご自由にお取りください形式じゃない、この板の上に上品に盛り付けてあるし!
……きっと、私の前にも女の人と来たんだな、と察してはいる。
『あの、親父さん!他の女の人こういうお店でどういう反応されてました…?やっぱりきゃっきゃっしてた感じで?それともお上品に…?』
「あ、こらこら!」
少し焦る悟を片手で抑え、店主に聞くと少しばかりきまずそうで。
「えー…と、」
「めっ!困っちゃってるでしょ!気になるのは分かるけれどハルカ以外の他の女の子とは関係切ったから安心しな」
『……何を安心すれば良いのさ?』
普段食べるものよりもちょっと大きめでキラキラして見えるお寿司。
そっと写真を撮って、携帯を少し操作してから悟をじっと見た。
先程の操作は単純にお寿司に感激してしまった衝動で寿司がスマホの壁紙になったのだけれど。
悟は少し言い辛そうに片手で後頭部…短い髪の所を触っている。
「……出張とか任務のついでにその地方を中心に関係持ってた女の子、全員関係切ってきたよ」
『ファッ!?』