第8章 スキルアップ
でも、まさか昼間からそんなレベルとか想定外だった。ポケモンの序盤の博士に会うとかそういうお使いクエストで、マスターボールとげんきのかたまりとかいふくのくすりを急にもらってみろ、ええー…良いんですか?本当に?って餌を貰いすぎた猫みたいになる。
『せ、せっかくだし1、2貫食べようかな~、ははは…』
ここに来るまでにちょっとしたカフェでお茶したし。ここ明らかに高いお店だし遠慮がちになってしまう。
そんな私に対してきょとんとした悟。
「え~?遠慮しないでもっと食べなよー、僕の奢りだからさ!車で来てないんだしお酒もあると思うよ?きっとこういうお店だから美味しいんじゃないの?」
『シラフでいくわ……味分かんなくなりそう』
せっかくのお寿司の味がアルコールでぶっ飛んでしまう。それに昼間っから飲んでられるか。
私の返事に悟はけらけらと笑っている。
「それじゃあ入ろうか!」
悟に手を引かれて静かな引き戸を開ける。短めの暖簾を片手で避けて店内へと入った。
「はーい、予約した五条でーす。親父さん、わざわざすまないねー!」
店内には優しげな男性が一人。デューク東郷じゃなくて良かった…!と安心してる私の腰に片手を添えて悟はカウンター席へと誘導した。既にそこには金箔の貼られたお箸(箸置きでさえ高そうだよ…)やらおしぼり等がセッティングされている。
店主側にはりっぱ寿司で重ねまくるあの皿なんて無い。よく知らないけれど木のまな板みたいなのに笹を敷いてる。一度は体験したいなと思ってた銀座の回らない寿司だけれど直前になって知ったなど。
片手で頭を抱えた。
『……悟。そういう所だぞ案件発生、良い意味で』
「ん?それって僕褒められたの?」
『ウン、褒めました』
来てみたいと思っていたからちょっと嬉しいかも、と席に座ってから壁に掛かった板に綺麗な文字(筆で書かれている…)のメニューを右から左へ、左から右へと視線で往復して私は項垂れた。
値段……書いて無いんだけれど?