第8章 スキルアップ
「僕さぁ~…色の選択を迫られて心理テストだとか僕のキミへの何かを試されてるのかとか思ったんだけど……あの時の質問ってキミの下着の色だったんだ?」
『………あっ!』
口は災いの元。空いた片手で自身の口を急いで押さえるもどうやったって言葉は元には戻せない。
悟は少しばかり頬を染めていた、珍しい。
「……クククッ、僕の好みに染めようとしてくれてたなんて。今晩が楽しみだな!」
隣に居た悟。タタンッタタンッとスキップをしてキッチンから消えたと思えば…多分私に見えるようになんだろうけれど、床でフン、フン!と腕立て伏せをしている。
トースターから焼けたパンを取り出して第二陣を入れて焼き始めながら、見える位置で気合入れてる悟の元へと向かった。止めさせなければ。そこまで気合を入れられては困る。謎の筋肉を着けるんじゃない。
近付くとあの瞬間にいつやったんだ?と疑問になる香水の良い香り。本気を出してる…香水瓶とか持ち歩いてる?小さなアトマイザーとか持ち歩いてたっけ?悟が持ってるの見たこと無いけれど。
近くで膝に手を当てて中腰に悟を覗いた。
『何腕立て伏せしてんのっ!』
「ふんっ…今日明日とハルカを抱く為でしょ?鍛えておかないと…今夜は寝かせないぜ?ふんっ、ふんっ」
『明日もなの!?
……ちょっといい加減そのふんふん言うのやめろや!』
私が驚いた事に対して、え?と困惑した悟は予行練習を止めフローリングの上であぐらをかいた。私はその悟の前にゆっくりとしゃがむ。
今日着ている物はロングスカートなので静かに膝裏にスカート生地を挟んで座った。
「え?ちゃんとしたデートしてないでしょ?デートしたいじゃん。するでしょ?観光デートにスイーツデート。それからラブホで派手にえっちするのさ!」
『観光デートに、スイーツデート…?
おい、最後!最後のラブホは要らないでしょっ!』
そんなに色々と五条悟という人物を教え込まれ過ぎたら勉強に手が付かない。
好きで好きでたまらなくて、この人を愛しすぎているのにそれ以上の愛を知ってしまえばそれこそ真の呪いだ、想いすぎるのも良くない。
悟に振り回される明日を想像し、最後にいかがわしいホテルに引っ張られる自分を考えて、悟の服を掴んで首を振る。駄目です。キャパオーバーです。
悟は笑いながらあぐらをかいたままで前傾姿勢を取った。私に顔が近い。