第8章 スキルアップ
玉犬が噛み付いた痕を治そうにもこのわんこは賢いようで、とっくに離してて正気になる時には既に攻撃したその場所も治療していた。
もふもふの体毛を撫でると暖かい。よすよす……。
玉犬はしっぽを振りながら伏黒の側へと寄り腰を下ろした。
その頭を撫でる伏黒は倒れた男をじっと見ている。
「呪霊による術式の精神汚染とかそんなんだろ。それもみたらいの式髪で対応出来るやつ。精神汚染が継続するように呪力を移してんだろ。みたらいの式髪に吸われたこの男からはもう、呪力を感じられない」
「じゃあずっと見られてたのってこの素っ裸の男みたいな、洗脳された人間って事?」
そうなると敵が多いのではなく、敵により被害者まみれの任務という事になる。話が違ってくるわ、祓うだけじゃない保護活動が増える。
「アガリビトってのはそういう噂持ってるから、その能力使う呪霊が居るんじゃね?」
『そしたら、こういう人達車に乗り切らないね。バスみたいなのないの?この気配とかうじゃうじゃいるでしょ。その精神汚染中の人達も呼んじゃってるみたいだし…』
伊地知がやって来た所で、伏黒が先程の起こった事を説明してく。
その間にも虎杖と釘崎、私は周囲を確認した。
ガサ、ガササ!
その音で皆が振り向けば、ンーンーと唸りながら…揺れながらこちらを虚無の顔で見ている人達。
伏黒がさっきの物音で説明を中断してたのか、説明の続きを伊地知に話し続けてる。玉犬は伏黒が簡単な指示をしたので森の中の人に食らいつきに向かってる。
「……まあ、問題点というと、誰かしら呪霊の被害者を拘束するか、死なない程度に痛めつけるかなんですけど。4人居るんでそこはなんとかします」
「では、衣服と車の手配、と……。本当に応援は大丈夫なんですか?」
やり取りを聞きながら、自身の鞄から鏡を取り出した。
式髪の多さで私は反転術式で自身の溜め込んだものを吐き出すので、白髪化した本数の把握に役立てるだろうと持ち歩いてる。無茶をしないためにも。
今は足元でうつ伏せになっている男の……さっきので少しは式髪を使用したか、と確認しても白が圧倒的に少ない。全体の1割にも満たない。まだ拘束に反転術式を使え無さそうだ。