第8章 スキルアップ
今更無理をしないためって人里離れたここで引き返せない。車で伊地知と共に待ってたら襲われる。なら3人と行動がベスト。式髪が使用されていない分戦闘は出来ず、祓うよりも呼び寄せる。もしも呪霊に触れたとしても基本的にある呪力でカウンターが出来る。
ただ、一緒に行動する3人は心穏やかじゃないと思うけれどね。
虎杖は私に人差し指を向けた。
「呪霊ホイホイ」
『ホイホイ言うな』
皆気を引き締めて、前方を向いて黙る。ナビが目的地を知らせるのは道の終わり。雑草だらけではあるけれど砕石の道の終わりは車が4、5台ほど止められそうな空き地。
伊地知はハンドルを回し、帰りはそのまま前進出来るようにして停車した。
「こちらでお待ちしてますので、くれぐれも気を付けて」
「よし、行ってきます!」
一斉にドアから出て雑草だらけの空き地に集まる4人。
そこらじゅうから視線だとか気配を感じる。携帯を見れば午後4時半。今居る場所は頭上に木々が無いから明るいけれど、森の方を見れば薄暗くて気味が悪い。
衛星写真から見てここら辺一帯が森。
民家も特に無い、薄暗い環境であるという事で帳はナシで行こう、と話し合った。
その話し合いの中で、既に木の幹から指や人の顔がこちらを覗いている……。呼吸に合わせて肩や膝などの肌色も幹からはみ出て見える。
調査によると付近の民家から行方不明者が何人も出ている。
そして昔から知られている、アガリビトの噂。もしも本物じゃなくてもそういう《自然100%の恐怖》《連れさらわれて、裸になって野生化する》等というたくさんの噂が定着して、呪霊の能力になっていたら。
「俺がまず玉犬で様子を見る」
「うん、頼むわよ伏黒ー」
伏黒が印を組み式神を呼び出す。足元からずるずると影から生まれる使い魔……黒い犬の影がせり上がり形を成す。