第7章 このリセットは強くある為に
むむむ…、と眉間に皺を寄せ、店舗代表の生菓子の写真に目移りさせていれば黄色い声が聞こえ、開いたパンフレットから顔を上げた。
薄めのサングラスであるから悟の容姿に見惚れた女性陣が悲鳴を上げたみたいだ。
「……フッ」
"きゃああっ!"
なんかやってんなぁ、ってか仮にも…いや、今じゃ本当に恋人か。恋人の隣で女性陣にサービスしてんなよ、とチラッと悟のサングラスを外し、決めポーズを歩きながら見届けて私は先に進んだ。
よし、悟は置いていこう。黄色い声は横から斜め、そして背後に流されていく。
この通りだと豆かん専門店舗やわらび餅の名店があるみたいだ。む、とろっとろのわらび餅?へぇ、悟はサービスに忙しいみたいだからひとりで先に食べているか。
つかつかと先に進んでいると、私が地図を持っているからなのか、高校生程の男子三人に声を掛けられてしまった。
「すいません、ちょっと良いですか?」
「豆大福のお店探してるんですが迷っちゃって…地図良いですか?」
ぺこぺこと申し訳無さそうな三人組。
初めての京都なんだろう。まあ、私も初めてに近いものだし、と協力する。小さな写真が付いてるので私は携帯でマップを写してしまうと、少年達に手渡す。今、これが必要なのは彼らだろうし。
それにきっと渡してもその辺の店舗にまた同じパンフは置いてあるでしょうし。
『ここの店舗だから…もう少し戻った所だね。私は行きたい場所の地図を写真に撮ったから君達がこれ持って行きなよ』
「えっ良いんですか?」
にこにこと喜ぶ少年達。その顔が瞬時ふと真顔になった。視線は私の顔から外れた場所。
なんだ、どうしたんだろう、という疑問は私の肩に回された腕で察した。
「ハルカ、なんで先行っちゃうの?僕よりティーンズが優先かい?」
「あ、あの…」
戸惑う少年たち。見上げた悟は目元が笑っていない。今作られている青春の1ページを恐怖に塗り替えてどうすんだ。
今は道を聞いただけの何の非もない少年を優先しよう、とパンフレットをつっ返そうとする少年の手を首を振って制止する。
『後ろのスタンドは気にしないで。無事お店辿り着けた後もきっとソレ、必要になるだろうから君達にあげる、使いなよ』
「は、はい…ありがとうございます」
目的地に進みながら、申し訳無さそうにぺこぺこと頭を下げる3人を見送った後に斜め後ろの人物を見上げた。