第7章 このリセットは強くある為に
55.
領域展開、集大成"鎹"。
その既に配置された人物、いや亡霊たちの誰かが言葉を発した。
"なんだ、久しぶりの集結だというのに、この様な雑魚を巻き込んだというのか"
誰が誰かなんて書物の人物名など暗記してない。顔も白い布を貼り付けて表情も見えないし。ただ発音する度に顔を隠す布がひらひらするから何となくあの人が話してるって識別するくらいで。
"そこの、春日の者。お前がリョウコの娘という訳か"
"それじゃあ本当の末代となってしまったという事ですか?"
"ああ、呪いだけが募っていく……"
"あのような雑魚程度も倒せない末代、なんという衰退か。ああ…我らが一族はなんでこんな仕打ちに……"
各場所からの囁きに、振り返る。あちこちの顔の布が揺れている。
巻き込んだ森にいた呪いですらもこの異常さに困惑していた。
私は悟を見上げる。悟も周囲を見渡して居たけれど私の視線に気が付いてこちらを見た。
『これが精神世界の具現化で合ってた?本当にこれが…?』
不安な私の頭にぱすっ、と手を乗せて軽く撫でられた。
「多分ね。そして話を聞くにキミのお母さんもどこかに居るのかもしれないねぇ…」
『……母さん、が…?』
会えるならば嬉しい。それが死んでいても。
悟の話に瞬いて居れば、"おい"とどこかから声を掛けられてその方向へと向いた。それは白装束ではない、赤装束。
"そこのリョウコの娘。隣の男はなんだ?禪院の男でもない、この血の匂いは五条の者ではないのか?"
ざわざわと会場での雑談の様に、口を開ける死者達。攻撃も来ないし、どうやらここでは私に吸い寄せられないのか呪いもその場で座り込んでしまった。
これは言っても良い事なのか?しかし血の匂いだと言って特定までされている。そういえば昔はあちこちの家に春日の者が派遣されていたっけ。その中には五条家にも行っていた可能性だってあるわけで。
『……それが何か?不都合で?』
舐められないようにしないと。赤装束の鎹と思われる人物に答える。
"不都合も何も、禪院を連れてくれば良いだろう!"
『連れて来たとしてその後に何されるか分かりきった事を私がしろって言うの?』