第7章 このリセットは強くある為に
『こっちにやって来るね…、』
「領域展開は呪力いっぱい使うからね。しっかり集中しな」
とんっ、と肩に手を乗せられ、呪いが更に近付くのを私は待った。黒くて、木の葉をいっぱいくっつけたような獣のような呪い。
山菜とかきのこだとか取りに入った人が、熊とかを怖がりながら森に入ったりしたんだろうか…。
確か、私の頭髪の式髪部分はあればあるほど呪力を溜め込んでいってる。領域展開をするとそれが全て振り出しに戻される。つまりは全てを使い切るくらいに消耗するって事。
私は呪いが近くに来た所で印を結ぶ、まるで祈るような印を。
『領域展開──集大成"鎹"』
午前の明るい、森の中の一本道の上。私と悟と低級の呪い、その全てを異空間へと転送されたみたいな。
精神世界の具現化?……ははっ、なにそれ。私の中にこんなおぞましいモノがあったって言うワケ?
──踏みしめる大地は水分の無いひび割れた地面、荒れた大地。
緑の草花もなく、たまに枯れた雑草があって。あちこちに長細い朽ちた木箱や墓石があって。木々は数本、けれども明らかに枯れていて生命力を感じられない。
空は天変地異の警告かという程赤黒く、血の色みたいで。
私と同じくこの光景を見た悟はピュウ♪と口を鳴らす。
「わあ……とんでもない執念を感じるよねぇ」
景色の他には周囲に白装束で、白髪で……顔を白い布で隠されたたくさんの人達、女性達が囲んでいた。
……集大成、鎹。
それはこれまでに犠牲となった春日の一族が現れる場所。死者の空間。全てが白髪化してるという事は呪力をぱんぱんの状態の一人一人が集まっている。
死者であるから、きっと肉付き良く見えても仮の体なんだろう。肉で出来てるのか、それとも何か違う物質なのかは分からないけれど、少なくともがりがりでも骨でもない人達。
巻き込んだ…ここに試しに来る為にロックオンした呪いに気を付けながら見渡せば異常な人物を数名…いや、2名見た。
ひとりは白装束ではない、立派で真っ赤な赤い装束。きっとあの女性が鎹。特別な存在感を放っている。
そしてもうひとり……あれは誰なんだろう?異空間から出された複数の式髪を巻きつけられた人物。その繭みたいに白髪で巻かれた人物が墓石や朽ち掛けの棺桶等を巻き込みながら、枯れ木にしっかりと固定されていた。