第7章 このリセットは強くある為に
母が仕組んだとはいえ、舐められるのはありそうだけれど。
ただそれは想像の中の事。実際にやってみなきゃ分からない事だしと手に持った本を閉じる。ヒントはもういい、あとはやることをやらないと。
私の持つ手から本を取った悟は元にあった位置に突っ込む。
数段の脚立を机のようにしていた…その脚立に置いた2冊ほどの本も元に戻さないと、と私は屈んで手に取る。
「それじゃあハルカ、特別授業といこうか。外でも歩きながら一度先生と生徒になるよ?」
『……わぁ、珍しく真面目そうな気配』
「いつもよりマシマシでふざけとく?」
『真面目でお願いね』
2冊の書物を戻し、書物の部屋の障子を締めて、ゆっくりと縁側を歩く。時は流れているのは分かる、木々が風を受けてさわさわと葉を鳴らし、スズメの他シジュウカラが楽しげに鳴いてる。でも人間の気配が無さすぎて時が止まっているみたい。
…ある意味、心の奥底では小馬鹿にしていた祖母が可哀想にも思えてくる。
玄関に辿り着いた私達は靴を履いて悟と並んで庭を歩く。
ぷらぷらと散歩というか、おしゃべりというか。野外学習といえば良いかも。でもデートという雰囲気では無かった。
玉砂利を歩く度にざぐざぐと鳴らしながら教師モードとなった悟に耳を集中させて見上げた。
「領域展開って閉じ込める事に特化してるんだよね。キミ達一族に伝わるものは言ってしまえばリンチ会場へのご案内なんだよ。死ぬ時はだいたい真っ白に式髪を染め上げてるからきっとひとりひとりが強い状態でさ。
一族の呪力も呪術も領域展開をするために呪力を溜めやすい構築になってるし執念が凄いよねー」
『うわあ……死んでもねちねちしてるねぇ』
「ホントだねぇ…女の恨みって怖いよねぇ…」
会話が止まり、ザリッザリッと玉砂利を踏みしめていく音。
昨晩と今朝食事をした、開け放たれた障子から見えた光景…、一族の者達の眠る墓場。その前で立ち止まる。
確かに新しい墓に私と祖母の名前が刻まれてる。祖母か龍太郎がやったというか、もしかしたら業者でも呼んで掘って貰ったのかも知れない。
うわー、と声を漏らして私が見ていると、悟はしゃがみ私の仮の墓の前でぱんっ!と音を立てて手を合わせた。