第6章 "愛"も止まらない!
52.激裏
お風呂に入る前、私は制服だったけれど湯上がりに制服また着て寝るのも…、と仕方なく着替えとして持ってきた服を着た。明日着る用に持ってきた、今着てる私服は寝返りさえもしにくそうな気もする。でも部屋着までリュックに詰め込めば荷物もかさ張るだろうし…との甘い考えだった。Tシャツとハーフパンツくらいは持ってくればよかったかも…。そして髪は寝るからと結わずに解いてある。まあ…この展開は寝る"だけ"じゃなくなってしまったのだけれど。
部屋に戻って早々に悟はまっすぐ襖を目指していた。布団だ。
今回は身の回りは龍太郎ではなく自分たちで。そして……ついに時が来てしまった。
ひとつしか敷かれていない布団の上であぐらをかく悟が不服そうな顔をして、天井の蔓で編まれた照明の電気紐を握る私を見上げてる。
「ええ~…電気消すの?意味なくない?」
『意味はある!絶対にある!』
「ちぇー、」
部屋のスイッチを私は紐を引っ張って消す。カコ、カコとオレンジの豆電球の後は暗闇になる筈が、文明の明かりが消えたというのに部屋は明るかった。
原因は分かる、障子から差し込む明かり。庭のソーラーライトの薄明かりではない、月の明かり。今日は満月で雲すら出てないんでしょう、前回よりも明るくて悟の輪郭も瞳の色も着ている服の色合いだって丸わかりだ。
これには電気を消したっていうのに焦った。色々と恥ずかしい。さっきまでお風呂に行ってたっていっても、肌を晒すというより重ねる最中だとか見られるって事に恥ずかしさを感じる。
悟はにやにやと笑ってくつろぐように涅槃のポーズで布団を叩いた。敷いてあるのはふたつじゃなくてたったのひとつ。掛け布団を完全に捲った敷布団の上で電気紐を握りしめて立ったままの私を誘っていた。
「そもそも僕、目が凄く良いんだけど?この薄明かりでもキミの全てが見えちゃうんじゃないかなー?」
『……はあ~?悟アイマスク付ける?』
「やだ。それよりもさー…」
ぱすぱすぱすっ、とまた布団を叩く悟。表情は優しく微笑んでいる。呼んでいるのは言葉がなくたって分かるのに私の足取りはその数歩が重く。
「こっちにおいで、ハルカ」
『……ん、』