第6章 "愛"も止まらない!
「で、一方では婆さんは一族を維持させようとしてる。この家を無くさないようにって考えてるんだろうね、キミのお母さんと正反対かな?
基本的に呪いを呼び寄せる呪力を反転術式のようにあり方を変えたんだ。すると呪いは近づけない空間が出来る……それを巨大化させている。家を守るにはピッタリだね!
よほどの事が無い限り家から出ないと見た」
『それじゃあ私にもそういう事が出来るとか?』
悟は風呂の縁でくつろぐのを止め、ザバァ、と体を湯船の外に出したので私はサッと反対方向に視線をやった。
"はいはい、タオル掛けたから"というのでそっと視線を悟側に戻せば、縁に座って大事な部分にタオルを掛けている。私もずっと湯船に居るのは熱い。
のぼせて倒れたらやばいから同じ様にしておこう、と悟と並ぶように風呂の縁に座った。男性ではないので、隠す場所が増える…フェイスタオルを縦長に片手で抑えた。
それでも隠れきれないので上半身は腕で抑え込んだ。いくら悟に揉まれたりしても見られる耐性がまだないし。
ちょっと冷えた床のタイルが熱い足にはちょうど良い。長く浸かり過ぎて少しのぼせちゃったみたい。
顔に張り付く纏まりきれていない髪を片手で耳に掛けた。
「……サンドボックスみたいに術式の解釈次第。
だからもっと強く出来るよ、ハルカの反転術式は。誰かの真似でも良いけれど自分のなりたいもの目指して努力してけば良いと思うよー」
横目にそういう悟はいつもの28歳児というよりも頼れる先生に思える。
はえー…、いつもこうであったらまた違ったのにな!とちょっと胸がキュンとした。よく考えれば、中学生や高校生で先生を好きになるってこういう事に近い。大人っぽくきちんと回答して頼れるっていう…まあ、今の一時的なときめきだったんだけどさ。
『……すっごいまともというか、的確な指示して先生みたい。いや先生だったか。え、悟熱とか出てる?』
半分ふざけているけれど、半分はちょっと本気。
悟はへらへらと笑ってる。私と同じくのぼせちゃいないかな?大丈夫だろうか、と心配の比率が僅かに上がってきた。