第6章 "愛"も止まらない!
51.
絶対的安心感VS絶体絶命、ファイッ!
……と、自身の胸の内で感情が戦っている。もう、脱衣所の時点でまだ覚悟が出来ていないのに(そもそも明日寮に帰ってくるって言ってたし明日までに~って後回ししてた私の責任もある)京都に来る事になって、祖母の家に来る事になって……。
そして現在、浴室内にふたりっきり。透き通った湯船の温度は適温で長めに浸かって居られそう。
悟に抱かれる事を出来るだけ後回しにしたい、と並んで湯船に浸かり風呂の縁に伏せながら考えている。少なくともこの浴室内では襲われることはない(と思いたい私が居る)
この大きな湯船…温泉施設の中規模程度の浴室は昔、生きていた春日の一族で賑わっていたろうに、今じゃこんなにも静かだ。
「ばばんばばんばんばんっ♪」
……若干一名の賑やかしを除いて、だけど。
両腕を縁に、上半身を伏せ腕に顎を置いた状態で悟をちらりと見た。すぐ横に居る悟は湯に浸かってる。いかにもお風呂スタイルはこうでなきゃ!という様な、頭上にタオルを乗せて。近くに浮かぶアヒルでも3匹足したら良いブロマイドになるかもしれないなぁ。
……しっかしこの人、温泉施設なら湯上がりに瓶入りのコーヒー牛乳を腰に手を当ててグビグビいくタイプだな、と想像内で似合いすぎて私は鼻でふふっ、と笑った。
そんな私の反応にそのスカイブルーの双眼が向いた。やっべ、なんか話題、話題……。
『この春日の敷地…、なんか帳みたいな…高専みたいなバリア張ってない?』
私が話題を振ると、悟は頭上のタオルをバシャ、と湯に浸かっていた片手を上げて位置を直す。
天井部を見上げてから私へと視線を移した。
「……そうだね。これ、多分あの婆さんの術だよ」
『結構規模、大きくない?ここ人数居なくとも土地広いし…』
敷地は結構広い。住む人が少ないなら限定的に規模を小さくすりゃ良いものの…。
悟はふふ、と笑って私の横に私と同じ様に縁に伏せる。学校の机で居眠りして隣の席の居眠りから覚めた男子を目が合ってしまった、くらいのちょっとした恥ずかしさがある。いやちょっとじゃないや、全裸だし。
「多分、年季入ってるから慣れている、それか自宅のみとかそういう縛りで規模を大きくしてるんじゃない?というより…」
『と、いうより?』
じっと私を見ている。その先が気になるけれど…。
目を少し細めると白い睫毛が目立つ。