第6章 "愛"も止まらない!
『それは私の意思と異なるけど。私は今は東京の学生。ならこっちに住むのとか無理でしょ』
「……そう」
ちら、と悟を見て、屋敷方面へと歩を進めて入っていく祖母。
ゆっくりと私達も後に続き、こそこそと話をする。
『あれ、諦めた様に思えますー?』
「いや、諦めてないね、きっと次の手を考えてるハズだよ」
『悟だったら次の一手としてはどうする?』
「僕だったら?怪我させても意味ないからねー、僕なら監禁とかしちゃったり?」
ぼそっ、と互いに声を小さく話してはいるけれどとんでもない言葉が飛び出してきた。悟の思考には監禁も含まれてるようだ。
『悟こっわ!近付かんとこ…』
「やだなあ、例えばだって!たーとーえーばっ!」
門からようやく玄関に着き、段差を上がって靴を揃える。
気を引き締めよう。監禁されないように。前回の事があるから悟となるべく離れないようにしたい所。私達の関係が恋人で良かった、お風呂も一緒に入れるだろうからきっと龍太郎の乱入イベントは回避出来るはず。
縁側を通り、前回とは異なる和室へ。がら、と開けた障子から見えるのは日本庭園ではなく墓地。不吉な景色であるけれどその光景は近距離で私は見たことがあった。
アイロンののりがぱりっとした、座布団に私と悟は座る。座りながら悟は庭の方に顔を向けていた。
「わー、凄いね!これ、みーんな春日の一族?」
お茶を手に取り悟は庭を見る。縁側が良く見えるのは悟の席、普通の家じゃこんな光景見られないだろうにわざわざ見せ付けるようにこの部屋にしたんでしょ、この婆さんは。
「おっしゃるとおり、一族の行き着く先になります。私もハルカもいずれは入るべき場所…、もう名も掘ってありますよ」
悟がちら、と私をアイマスク越しに見た時に私は首を僅かに振った。端の方にあったふたつのまっさらな墓石。ここからでもなんかぼんやりと陰影が分かる。
……勝手に名前彫りやがったな、この人。
祖母に視線を移す。祖母は私を凝視していた。