第6章 "愛"も止まらない!
そのまま棒付きキャンディを持ち上げる。ベリー系の味のやつね、補習の時に食べてた……、
私が飴を持ち上げた事によりその下にあった個装の飴だとかも見えるけど。
──明らかに食品じゃないやつ、あるんですけれど。
気が付いてゆっくりと視線を上げると悟は目元が見えずともにこにことしている。
『あの~……悟さん?この、飴どかした下に見えるものさぁ…』
「ん?ここには無いバナナのカバーの事かな?
てか、ハルカ…"さん"付けた!キスして欲しいの?ハルカったらそういう方法使ってでも僕とキスしたいの?」
『違くてっ!その、』
正方形のパッケージ。中の輪っかの形状が開封せずとも浮き出ている。
思春期に至らない少年少女なら理解出来ずとも、大人になってしまえば自ずと分かるようになってしまう。何に使う衛生用品かって。経験無くとも知っている。
片手に貰った飴、もう片手の人差し指でそれを指した。
「ええっ、要らなかった?」
オーバーリアクションというか、よく頭と胴体で表現出来たな、という程にマスオさんの動きをする悟。
似ていたのでちょっとだけくすっ、ときたけれど笑っとる場合か!とすぐ正気に戻る。
『そうは言ってない!』
「そうなの?残念!生でしたいのかと思っちゃったよ!」
『するか馬鹿っ!』
あっはっは!と私をからかいながら、コンドーム含む細かいお菓子をポケットに戻していく悟。
タクシーはウインカーを出して右折し、一本道の春日家へと進んでいく。いよいよか、となぜだかどきどきしてきた。
「まあこれは夜までお預けしといて。
……ところでハルカ、しばらくぶりだけれどお婆ちゃんになんて言うの?別れ際の言葉にお婆ちゃん…激おこぷんぷん丸なんじゃない?」
『ん、それは内緒。流石に別れ際の瞬間湯沸かし器っぷりも冷えてるでしょ』
私は人差し指を口に当てて、悟には言わず。
悟からフロントガラスから見える閉ざされた門へと視線を移した。
祖母の言いなりにならないために私自身でしっかりと伝えないとね…。
タクシーはやがて停車し、二回目の祖母宅の訪問の時がやって来た。