第6章 "愛"も止まらない!
「おい、出口そっちじゃねえぞ…」
「あはっ、葵、ごめんごめん!あっついでに八ツ橋買って行こっと!ノーマルにしようか生にしようか…チョコとか甘いよね~迷うなー…やっぱりおたべかな!」
こんな時に甘味かよ…全くブレないなぁ、悟は。
──覚悟は決めてあるのか。
その覚悟という意味を頭に浮かべて両手に抱えた荷物ごとぎゅっと抱きしめた。
****
「──考えてはくれないか?もちろん今すぐにとは言わん」
一室に通され、椅子に荷物を抱えて座る私の隣にどかっと座り、脚を組む悟。
私が口を開くよりも前に隣の男が目の前の人物…楽厳寺に口を挟んだ。
「いくら勧誘しようともハルカは東京一択で変わらないよ?親の許可を得ないと行けない未成年じゃない、とっくに成人してるし自分の意思で滞在してる。今更彼女の父親にどう言おうが、春日の現当主に媚びようが決心は揺らがないよ?」
背もたれまで寄っかかって居た悟は体を起こし、手を…指先を合わせながら少し馬鹿にするような笑みを零している。
その態度に青筋を立てている楽厳寺。
「五条、お前には聞いておらん。みたらいハルカに聞いておるのだ」
「ははっ!……医術の心得無くても呪術で人体まるっと治療。しかも治療だけじゃなくても自己防衛も出来る春日の血族。
身代わり、犠牲、人柱、囮、足の生えた病院…好き放題に呼び名を付けられた存在。その生き残りの若いのが居たって知ったらみーんな必死になっちゃってサ!
駄目だよ、ハルカ。下手げに縛りなんて結んだらキミがどんなに"生きたい"と思っても使い古されて…こう、ポイッ!だからね!」
『……うん』
一族がより力を強化するために契約者と縛りを結んでいた事。縛りは基本的に自分に課すものではあるけれど…。
おおよそ、一気に春日としての力を花開かせるのは10代後半…、家から契約金と共に売られ、縛られる人生。それは嫁入りではなく仕事として。適齢がくれば許婚と共に子を何人も為し、子供は本家で育てられ、後は犠牲になるなり自分で式髪を見誤って死んでいく。