第6章 "愛"も止まらない!
49.
京都に新幹線が着くと、アイマスクをして小型のキャリーバッグを引いた長身の男が待ち構えていた。
その長身の男、髪はツーブロックで白髪、上下とも黒尽くめ、襟は高く……と要するに五条悟という人物。京都か、京都に近い場所に用事があって先に来ていたみたい。
私達が新幹線から出た所で気付き片手をぶんぶんと振る28歳児。元気が有り余ってるようで何よりです。
「はい、おつかれサマンサ!それで、このままハルカを連れて直接楽厳寺の爺さんに断りに行けば良い?」
「いや、断って貰うために私達わざわざ連れて来たんじゃないんですけれど!?」
真衣が悟に食いつかんばかりに反論するけれど、悟はキャリーバッグを引いていない片手でまあまあと制止する。
私の少し後ろから祖母の家より持ち出した本を片手で軽く持っている東堂。部屋から一泊分の荷物を持ち出したものはリュックサックなので手は空いてる。東堂に手を出し持ち主である私が受け取ると重い。
重くないですよー、という表情を顔面に貼り付けながら私は両手で抱えた。
『東堂先輩荷物ありがとうございます』
「いや、いいって事よ」
拉致未遂したりとファーストインパクトは最悪ではあったけれど、新幹線の中では普通に雑談をしていた。
違和感というか、まあ人それぞれの趣味だから文句は言えないけれど、東堂はアイドル(長身の子)を追っかけしてるらしい。
"高田ちゃん"という単語を何度聞いたか。たんたかたーん☆という高たんビームという決めポーズまでプレゼンされてしまった。
それを(プレゼン)終始呆れながら真衣は眺めていた。きっと初対面の私に手際よくプレゼンしているからしていつもの事なんだろ。
京都のふたりの生徒との新幹線での会話を思い出して、覚えてしまった高たんビームを他の人の前で披露しないようにしたい。
歩きながら、品の良い着物を来た女性を目で追いながら真衣をなんとか落ち着かせた悟がこちらを向いた。
「ほら、ハルカ行くよ!楽厳寺のお爺ちゃんにギルド加入の誘い断るんでしょ?」
『そんなソシャゲみたいにさあ…』
楽巌寺というのは姉妹校の学長…東京が夜蛾であれば京都は楽巌寺という立場。拉致しろとはっきり命令したのかは分からないけれど、あまり気軽に断れそうもない。
でもまあ……悟が一緒ならばなんとかなりそうな気もする。