第6章 "愛"も止まらない!
ツカツカツカ、と進めると背後からも速歩きが来る。
やっばいやっばい、ヤバい!手に汗をかき遠い方の階段から教室戻んなきゃと少しペースを上げ始めた時だった。
「待ちなさい、そこの!」
『何のご用でしょうか!?』
もちろんこのやり取りは小走りのままに。
許婚…龍太郎とのやり取りを思い出す。あれは全力疾走だったけれど。
背後をちら、と見る。結構近くまで迫って来ていた。
『私何かしました!?』
「ちょっと聞きたいことあるだけだから!」
本当かどうか知らないけれど、スピードを緩めて廊下で足を止めた。
一応距離は取っておこう、と近付くと数歩後ずさりしておく。
「あなた、こっちに編入したっていう子よね?」
『子っていうか(成人なんだけれどな)……まあ、そうですけれど』
警戒は解かない。
黙っていた男の方が私の方に軽く手を出す。
「俺達は姉妹校、京都の呪術高専から用があってこっちにたまたま来ていたんだが……、春日。お前に頼みがある」
『人違いです、それじゃ』
「待て待て待て!」
くるっ、と逃げようとした所で肩を掴まれてしょんぼりとまた向き合う。
結局はそういう事になりそうだ。
男は東堂葵といい姉妹校の3年、女は2年の禪院真衣。
それを聞いてあっ、と禪院…いや、真衣を指差しかけて止めた。話は短く終わらせねば。
口内の飴を頬に詰め、東堂の話に耳を傾けた。東堂は少し首を傾げ俺、間違ってたか?という様子だ。
「春日…だよな?」
『いえ…まあ、言いたいことが何となく分かりますけど、私はみたらいハルカ。名字は異なりますが確かに春日ですよ。
けど、自分の意思でこっちに居ますので。それじゃあ、』
がしっ、とまた肩を掴まれまたかよ!何が他にあるんだよ!と心で叫ぶ。そしてゆっくりと"まだ何か?"と振り返った。
突然始まる真衣による京都のプレゼン。
「そんな事言わずに~、京都良いわよ?歴史ある都、美味しい物もたくさんあって四季によって景色も良いわよ?休日はぶらっと散歩するだけで豪華なツアー…どう?来たくなったでしょ?」
『いえ。京都、祖母居る。東京、居ない、安全』
「あーもう頑固!東堂先輩!ここはやるしか…っ!」