第6章 "愛"も止まらない!
遅れてプルタブをやっと起こしてそのまま私はドリンクを飲んだ。
敷地内だからって完全に安心してた。外で歩いてるだけで私はタダでさえ呪いが寄ってくる。幸か不幸か、悟のマーキングを消すなという訓練は自分の怪我を治さないという調整は出来るようになったけれど、寄せるのはもうどうしようもない。
だから外はちょっと警戒しながら行動し、ここ呪術高専の敷地内は警戒心を完全に解いて過ごしていた、のに。よりによって京都の人が居るとか緊張感が走った。
いや、全ての京都関連が敵というわけじゃないけれど用心に越した事はないし。
こんな時に限って悟は出張してる。可能な限りは自分の身は自分で守れるようになれたとは思うけれどもしもの時には頼れない状況。
明日には多分戻るけれど…。
"明日帰る"それを考えると少しそわそわとしてきた。明後日は休みだから。どうしよう…まだ覚悟が出来てないんだけれど。
あの晩の浴室での事以降に、あんな状況になる事はなく。いや、軽く"パイタッチ!"とかふざけて揉む時とかあるけれど、状況が再現される事がなかったから深く覚悟をしてなかった。
そのえっちな状況を考える前に、今は京都の人達の動向に注意するのが先なんだけれどねぇ…、とちょっぴりぬるくなってきているドリンクを飲み干す。
「よーし、休憩終わったらハルカ俺が相手してやるから掛かってきな」
『宜しくです、パンダ先輩』
ぶん投げられる覚悟をしながら私は階段端に空き缶をカンッ!と音を立てて置き立ち上がった。
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午後の退屈な数学の授業中。家入からの連絡を受けて医務室に向かって、治療を終えた私は教室に戻ろうと歩いていた。
制服から飴玉の包みを取り出して口に入れる。家入は甘いものは苦手ではある、けれど悟やら私やらに餌付け用か、それともたまに自身でも仕方なしに糖分…と食べる事もあるのか。ひとつ貰っちゃったのだ。
爽やかなレモンキャンディ。口内で転がして歩幅は大きくせずに進む。だって数学だもの。まだ授業終わってないし。
前方から見たことのある二人組。
はっ、として私は急いで真後ろを向いて歩を早める。急旋回。
遠回りしよう、関わっちゃ駄目だ。少しでも危機を回避せねば。