第6章 "愛"も止まらない!
「……お釣り、取り忘れてるわよ」
『……あっ、はは…ありがとうございます』
ああ…お釣りね、お釣り!それは見逃したら大変な事になる所だった。
さささっ、と駆け寄り、お釣りを右手に握りしめてUターンする。
グラウンド方向へショートカットして行こう、あんまり急ぐと炭酸を振っちゃうからな気を付けて気を付けて…。
「お、戻ってきたな」
パンダと共に日陰に立っている禪院がにっ、と笑って迎えてくれた。
他の人達は地べたに座ってたり、階段に腰掛けていたり。一斉にブレイクタイムに入ってたというか、私というドリンク係を待っていたというか。
禪院は私のメイドイン反転術式のバッグを指差して見ている。
「随分と便利に使っているな、」
『普通だと見えないらしいから場所とか限られますけれど……あ、これお釣りですー』
合流したし、ときょろきょろと背後をチェックし、後を付けられていない事を確認してほっとした。
私もスポーツ飲料を手に取って、虎杖の隣に座る。変に疲れてしまった。
『なんか京都の人居たから少し急いでてさ、炭酸の人は吹き出るかもしれない!』
「お、マジか」
ちら、と私を見た虎杖がプルタブに指を掛けてちょっと仰け反る。プシィ!と大きな音は出たけれど吹きこぼれる事はなく、セーフ!と野球の様にジェスチャーを出してぐびぐび飲み始めていた。
「京都の奴ってどんな?」
『伏黒とか知ってる人か分からないけれど、男女のコンビ、女の方は肩に着かないほどの黒髪、男の方はガタイ良くて…額から左目までアザのようなもの…かな』
自販機で見た姿を思い出す。それを言葉にすれば階段に座って振り向いている伏黒や、たったままの禪院の表情が変わる。
「"あいつ"だな……」
「今日なんかありましたっけ?」
「特に聞いちゃいないな。普通にお使い程度なんじゃないか?」
あらま、私がここに来る前に顔合わせでもしてる様な、皆が知ってる人みたいだ。
他に情報が無かったか、と自販機に向かってる時に聞いた会話を思い出しながら、スポドリを開けようにもちょっと切りすぎた爪先でプルタブに翻弄される。
『なんだっけ、こっちで対応すれば良いのになんで京都から来ないと行けないワケって言ってたなぁ…、』