第6章 "愛"も止まらない!
48.
『「「「ジャンケンポン!」」」』
『……(スンッ…)』
……と、一年組でじゃんけんをし、負け、惨めにもひとりぶっちぎりで負けを3回重ねたのが私である。
呪術師たる者、呪術を使ってなんぼだと思っていたけれど実態は体術に重きを置いた授業内容な気がする。というのは高校を出ている身として感じるのは高校での体育は一限、たまに二限立て続けだったけれど高専での体術は午前中全部だったり午後全部だったり多めの特訓時間が取られていた。
机に向かうよりは駆けずり回る方が好きであったから文句は言えないけれど、本当に体術オンリーな為バスケや卓球というスポーツではない。楽しむよりも痛みを得る授業なので、大体体術の日は私がクラスメイトや先輩を治療しながら体術を学んでいるので疲れは二倍だった。
まるっと体術で潰れた午前中、喉の乾きを訴える人が一人でも湧けば自然とこうなるのは分かっていた。
クラスメイトと先輩方のリクエストをメモした携帯画面を見ながら買っては詰まらないように一本ずつ引き抜く。
チャリチャリ、ピッ!ガコン、というまるでライン作業のような事を私は繰り返している。
『……ふーっ、後はカルピスを2本か…、』
そうぼやきながら小銭をチャリチャリ投入していた時だった。
だんだんと近付く話し声。聞いたことの無い声だ。その声の主が気になって私は手をぴた、と止めた。
「こっちで対応すれば良いのになんでわざわざ京都から来ないと行けないワケ?」
見たことのない男女二人組だ。
会話からからして京都の人っぽいな。ちら、と視線を向けたのを自販機に戻して荒目ではあるけれど巾着袋状にした怒髪天に急いで飲み物を詰め込んで速歩きでその場を去ろう。
片手で2本ずつ手早く突っ込んで、きっと非術師にはジュースが浮いてる!と思われそうなマイバックを左に下げ、私はその場から小走りに数歩進んだ時だった。
「ちょっと!そこのあなた!」
背後から確実に私に掛けているであろう声。
思わずびくーっ!と全動作を止めてしまった。
その状態でギギギ…と首が鳴りそうなくらいにゆっくりと振り返る。
そこには呼び止めたであろう、肩ほども無い短めの黒髪の女性、そして隣にはガタイの良い男性、顔にアザのようなものがある。年齢的に10代~20代といった所。
私が振り向いてから腕を組んだ女性は私をじっと見てる。