第2章 視界から呪いへの鎹
「きっと呪いに立ち向かわないように、こういった呪いと戦う事にならないように大事にされてきたんだろ。その気遣いのせいで早く死んじまうっていうのにな?」
『……』
「しばらく自分探しの旅だとか、恋人との旅行に出るとかぼかして言ってけば良いんじゃない?
あっ、だったら理由に僕、使っても良いよ?恋人役、五条悟としてキミの親父さんにお義父さんって呼んじゃったりしようか?昨日会ってるからそれくらいヨユーっしょ」
見上げた軽薄な男に鼻でふすっ、と笑ってしまった。
『……悟さん、外見は良いけれどさぁ』
「……ふっ、ありがとナス」
すっ、と決めポーズをしているのをしらーっとした目で私は見た。
『中身というか……性格が最低だから無理とか言われない?』
「あ゛ん?」
『それにうちの父親に恋人だとか抜かしたら、親父のグーパンが顔面にめり込むよ』
娘のセキュリティとなっている強い父親だ。寄ってくる人を眼光だけで殺しそう、そう…人類最強のサオリ・ヨシダのように。いや…もはや私のスタンドかもしれない、オラオララッシュが近付く人を押し退ける。
でも。待てよ……?私の斜め上の顔だけは良い、軽薄で胡散臭い男はどうして父と仲良く話してたんだろう?
進行方向を気を付けて確認しながら、疑う視線を斜め上に向けた。
『あんた、昨日私の父親に随分親しげにしてたけれど、なんでああも話せてたの?普通目からビーム出るレベルで私のセキュリティモードになるんだけれど…』
片目だけが見える状態で、その目が斜め上を向いてる。
ぱちん、と音がなりそうな程に引っ張っていた目隠しを戻して、また道化の如くジェスチャーを付けた。
「秘密☆」
『うっざ!』
そんなやり取りをしながら、私は荷物を取りに家に帰った。
──ちなみに、見えない私に替わって、家の中の呪いを祓ってくれたのだけれど、そのせいであちこち散らかり、片付けで時間を喰ってしまったので予定よりも遅れた出発になる…。