第2章 視界から呪いへの鎹
「場所分からなくて行こうとするとかウケル。まあ、僕が分かるから着いてくれば良いんだけれど」
『……日帰り、だよね?久々だしお土産持ってった方が良いのかな、結構怖いばあちゃんって感じだったんだよねー…』
笑ったりすることのない、怖い人だったし。
想像するは手土産も無いなんてマナーのなってないクソガキだねぇっ!って罵りそうな祖母。
駅でバウムクーヘンでも買って持っていけば良いかな…。
「春日家じゃなければ日帰り、春日家ならきっと昔話とか聞いたりするだろうから今日中には帰れないかも。向こうのホテルか、おばあちゃん家に泊まる感覚で行きな。
キミ、マジで色々教わった方が良いよ、僕が近くに居る分キミに寄ってくるのはある程度祓ってあげられるけれどさー…
初めて会った日も纏わり付いて、焼き肉みたいにキミの呪力に焼かれてたよw」
語尾が笑っている。草を生やされてる気がする。
その…、呪いを払わずに私で焼き肉されてる姿を堪能していたみたいだ。
……って、多分、ゴミがついてるって言った時にでも祓ってくれたのかもしれないけれど。
『それ、見てるだけで祓ってるって言わないのでは……?』
思い返せば、昨日も隣の空間を指して、その指先が私を指すまでずっと眺めてたし。
『昨日もそうだった、見えないでしょって言って空間指して私に近付くまで観察してたし…?』
「あー…そんな事も、あった気がするね。でももうこれ以上は残機減らしたくないじゃん?マリオみたいにバグで残機増やせる訳じゃないんだし」
『そんな人の残りの寿命をゲームで例えられても……いや、すっごく分かりやすいけどさぁ』
肩に手をぽすっ、と置かれ軽く押される方向は自宅方面。
なかなか行く事の出来ない、遠出をする休日もまた良いかも……と非日常感を自覚しながら家へと向かいながら、悟に話すつもりではないけれど口に零した。
『もし泊まりなら、父親に言わないとなぁ…』
「それはやめとけよ、多分奥さん…ハルカの母親に遺言とかで止められてると思うぜ?」
『……えっ?』
見上げると、片手で目隠しを上げてその片方の瞳が私をじっと見ている。その瞳の虹彩は空を閉じ込めたような青。
口元は笑っていた。