第2章 視界から呪いへの鎹
5.
新幹線に乗り、バスに乗って……今じゃ遠い過去の記憶の、母方の実家へと辿り着いた。
バス停から降りて30分は歩いたんじゃないかな…、森の中にひっそりと大きな建物がある。塀に囲まれ、正面には門。こんな家があったなんて初めて知った。
『……でっか!』
立ち止まってそのひとことが私の口から飛び出た。こんなに大きいなら何人も住んでるんだろうけれど。想像する門番みたいな人は居ない。
「ほらほら、立ち止まってないで…、まったく……キミって本当に好かれるねぇ、結界の外側の呪いが脇目も振らずハルカちゃんに向かっていくんだもーん」
悟が何やら後ろの空間をシャドーボクシングのように殴ると風が吹く。
呪いっていうのがあったんでしょうけれど何が起こったかは私には分からない。
「無防備過ぎるよ、ホント。ここに来るまでにどれだけ寄せるのキミは。今の含めて今日、僕がハルカちゃんと守った回数当ててみ?」
『えー…?』
急にクイズが始まったぞ……。
インターホンを押す私の手を払い、悟は門を手でこじ開けて入っていく。良いの?これ不法侵入じゃない?
私は冷や汗をかきながら、ズボンに両手をポケットに突っ込んだ悟の後を、私は早足で追いかけた。
『3くらい?』
「ブー。正解は7……と、ついでに祓ったおまけ2匹の9!」
『そんなにっ!?』
そんなに呪いってあるんだなぁ。
それを私が寄せてるんだろうか。頭髪の白の数だけ呪いを受けた数なのかもしれない。
「マジだよマジ。家に居たのは除いてこれだよ?放っておいたらキミ、すぐに死んじゃうって。実際、今日疲れたりお腹急に減ったりしないだろ?僕が代わりに全部祓ってるからな?ほらほら、感謝は感謝?」
感謝してよ、感謝と、そう軽く言っているけれど、そんな9匹以上?も退けるなんて凄い人だったりするのかしら。
その呪いの形状はどんなものか私は知らないけれど。
その良く知らない呪いで、私の命が削られているんだ。放っておけばまた、この亜麻色を白に染めていたかもしれない。
……そりゃあ感謝、だな。
『ありがとうございます?』
「疑問形だけれどどういたしましてー。見て、ほら迎えが来たよ」