第6章 "愛"も止まらない!
抵抗を諦め観念してがっくりと頭を下げ、もたもたと私は立ち上がった。
私の尋問に時間を掛けるよりも体術に掛けるべきだって事さ!
ちょんちょん、と突かれて振り向けばパンダ。
「何、お前悟と付き合ってんの?」
『………黙秘しまいひゃい!なんで頬を抓る?……んですか!これ、別に天丼じゃないですよ?絶対に抓らないと話が進まないとかじゃないですからね?』
パンダにまで抓られてしまった。3人に抓られた頬を擦りながらちら、と上の校舎のある方向を見ると覗く悟。視線が合えば引っ込んでいく。だから教師ィ!この状態をなんとか言え、この状況を作った本人なんだからさ!
いつまでも質問を放置してりゃもっと深い質問をされる。
「おかか」
『いひゃいっ!?まだ何も言ってないのに!ドウシテ!』
これで4人に抓られた。私また何かやっちゃいましたか?抑えながら、先輩方に片手で制止した。
『ほら、体術の訓練ですよね?私の事根掘り葉掘り聞くのはもう良いですから』
「ツナマヨ」
「ああそうだな、俺の質問答えてねぇもんなー」
じわじわと詰め寄る、体術そっちのけのティーンズの尋問官達。
私が冷や汗をかき始めた時だった。
ブブブ、ブブブ。
『ヴァッ!?』
私はびくんっ、と体を跳ねさせた。いきなりポケットが震えたからだ。
急いでスマホを取り出す。画面には"家入硝子"……やった、勝った…!小さくガッツポーズをして私はその電話に出た。
『はい、ハルカです』
"ハルカ、医務室来れるか?3人の負傷者が来たんだが"
『もちろんです、今すぐ、ええ今すぐに行きます!』
"そうか、待ってるから早く来いよ?"
ポケットにしまう携帯。心の中での勝利の雄叫び。
『……という事ですので、私は医務室に行って参ります。怪我人が3人も居るので、ええ…怪我人が3人も、ふふん…、早く行かないとなぁ~』
走り出す私の背に、"午前中いっぱい体術じゃなかったか?"という伏黒の声が聴こえたような気もした…。