第6章 "愛"も止まらない!
『……いじめる?』
「オウ、イエス!」
『やだぁ…私これ解いたら尋問じゃんけ』
既に公開処刑はされているけれど。その理由を聞かれるのが次の手なのが分かってる。
しかしいつまでもクラスメイトを拘束していられない。
する、と"怒髪天"の拘束を解除し、ふたりの走り出すポーズを見た瞬間に私は逃げるように離れた。もうこれしかねぇんだわ、逃げるってコマンドしか!戦うとか出来ないんだなぁ、能力的にもさ。
すると背後で釘崎の…まるでトレーナーがポケモンに指示するようにしている声を聞いてしまった。
「いけ!虎杖!電光石火よ!」
「おっしゃ!ぴっぴかちゅう!」
『アイエー!?ナンデ?ナンデ虎杖…っ、』
風を感じたと思ったら腹に触れられる感覚。あっという間に抱えられている。
抱えられたままにふと思い出すは歓迎会の悟の紹介。"50mを3秒で走る"という情報。抱えられた獲物となった私は石の階段前に正座させられる形で降ろされたのだった……。
****
「……で?」
『黙秘します!…いひゃいっ!』
黙ると言ったら釘崎に頬を抓られた。
ドウシテ…先輩方も居る中でこんなリンチの様な事に…!きょろきょろと首を動かして、とある一点を見て舌打ちをすると顔を姿を引っ込める原因。教師らしい仕事をしろ!と心の中で悪態をついた。
はあ、とひとつため息を吐き、視線は誰にも合わせないで顔を伏せた。
『えっと……私が無意識に自己治療しちゃうので、治さないようにっていうコントロールも兼ねてですねー…』
「"兼ねて"って事は他にも意味あんだろ、ハルカ」
なんだこのパンダ、尖すぎる……!丸いフォルムなのに鋭いぞ!?と目を丸くしてパンダを見てからまた顔を伏せた。
『………黙秘しま、いひゃああいっ!虎杖てめっ!』
「えー?そんなに痛かったぁ?オーバーリアクションでないの?」
『痛いモンは痛いの!治っても痛いもんは痛い』
目の前でヤンキー座りを始めた釘崎。ササッと視線を外すも、両手で顔を挟まれて視線を強制的に合わせられた。もうね、彼女本気の目だわ。
そして片手がチィ…、とジャージのファスナーを少し下げる。その本気の顔はあっという間に引いてる顔になってしまった。
「……ねぇ、これはやりすぎじゃない?先生」
『発疹とかなんかの病気レベルなんスけど病気じゃないよ……ただの所有物って事だから…』