第6章 "愛"も止まらない!
『3周……走ってきた、よ……』
ぜぇぜぇ、と両手を自身の膝に当て、荒い呼吸を繰り返す。皆に頭を垂れている状態だ。
頭上でよーし、という釘崎の声に顔を上げるのがしんどい。上げた瞬間がジ・エンドよ。
覚悟を決めて顔を上げる。勝ち気の釘崎の表情。
「みたらい、2年の先輩達とは初めてよね?その合同ー…………ちょっとあなた、それ…」
クラスメイトや先輩から私に駆け寄って来ている、勝ち気の釘崎の表情はみるみる真顔になっていく。瞳が燃えるように、楽しい玩具を見付けてしまったように爛々としていた。
私はその視線からふい、と私は一時的に目を反らした。そらさずには居られない。
『……釘崎ィ…頼む、今は何も聞かないでくれぇ…ゴディバの裸婦の如く見なかった事にして欲しいなー…』
「いや、聞くわ。面白そうだから聞くわ、新鮮な話題が飛び込んできたもん、ゴディバの裸婦をガン見する人ばりに見とくわ」
舌舐めずりしてゲッゲッゲと笑い、虎杖を手招きする釘崎に恐怖を感じ、私は先輩方面に向き直った。虎杖達を待ってたら突っ込まれる、早く撒かねば。男女一人ずつとパンダの3人…あれ、パンダって1頭2頭って数えるよね?3人にまとめてしまって良いんだろうか……。
走り出す前に体術の訓練をしていた先輩と伏黒は訓練を止めている(…のか、決着でも着いたのか)
その先輩方達に私は自己紹介をすることにした。もう、まずは遅刻よりも何よりも自己紹介だよ…。
『先日一年に編入してきました、みたらいハルカです。一度高校や短大は出た成人ではありますが後輩ですので構わず呼び捨てて下さい』
近付く釘崎と虎杖に右手を出し、しゅるしゅると"怒髪天"で腕に絡ませてこれ以上来ないように制止した。こういった事に悪乗りしない伏黒がありがたい。
絡まって離せ!と藻掻くふたりを、ポケットに手を突っ込んで見てる伏黒。私の自己紹介が終わると先輩達からの自己紹介が始まる。
「そうか、宜しくな。私は禪院真希だ」
「俺はパンダ…で、こっちが狗巻棘な。呪言師だから言葉は基本おにぎりの具で話す」
「しゃけ」
やはり呪術高専、学年毎で合同授業をしても人が少ない。そんな人数で得られる情報が少ない中で、あっさりとした自己紹介が軽く終わった所。
私はようやく放置していた、ぐぎぎぎぎ…!と藻掻くふたりを見る。