第6章 "愛"も止まらない!
46.
空き教室で悟にこれでもかという愛情表現を受けて、満足した悟はアイマスクを付け直した。
"授業始まってるけれどキミ、僕にこうもされて悪い子ちゃんだねー!"
どの口が言ってんだよ、どの口が。
少しばかり睨みながらも舌打ちを小さくすれば悟は満足げな笑みを浮かべて今度こそ開放してくれた。
ただ、一言…空き教室のドアをガラ、と開けた際に振り返って"部屋まで僕が付けた印、治しちゃったら確実に食らうから"
ビクッ!と私も流石に頷いて隙あらば治療は諦めた瞬間だった。
悟に首筋も唇も吸われ続けてとっくに始まってる授業、一限目。
私は急いでジャージに着替え、体術の授業という名の自主練習に遅れて向かった。
げんなりとしながら。これから私の身に起こる公開処刑という事を知りながら、だ。
綺麗に整った運動場、一年の3人の他に度々見たことのある他の学年が数名追加されている。
上の学年の女子と伏黒が戦っている。本格的にやるんだな、と既にここに辿り着くまでにランニングを済ませている気がする私は、釘崎の近くで走る足を止めた。
『はぁ、はぁ…、遅れました~…!』
「遅いっ!みたらい、まず3周ランニングねっ!」
先輩と伏黒の体術から振り返る釘崎は、腕を振り上げて叫んでる。
『先生の指導が長引いたんだよー!…まあ、ランニング行ってくるわ(充分に走ってるけれど)』
自身の襟元を片手でぎゅっと握りしめて自身の胸ぐらを掴んでる状態でランニングを始めた。これは平気なハズだ、一休さんばりに頭を使ってるけれどファスナーは上げてないし服で隠してるって訳じゃない。手の拳に視線は行くけれど拳の裏…めっちゃ赤い(一部紫っぽい)発疹のような痕から目は一時的に反らせる。
悟にああは言ったけれどいざとなったらさ…、多数の視線が刺さるし。合同の授業初めてだし自己紹介する間もなく遅刻、かつ今走ってるしね。
その視線のうち、ちょっと変わった位置からの視線を感じるな…と校舎をみると、壁に寄り掛かってアイマスクをした人物が見えたのでやけくそになった。もういい、トンチで隠しませんよっ!むしろ見せつけてやらぁ!