第6章 "愛"も止まらない!
そんな目で悟を見上げると分かりやすいくらいに、小憎たらしくニコォ…、と笑った。そのえくぼをやめろ。
ちくしょう。私は口を一文字に結んで怒りを出さないように堪える。今すぐにでも治したいけれど意識的に治さないように変に気遣っているから、ある意味では呪術の調整が出来てるという嬉しい成果だけれど、キスマークが知られたらとんでもない事になる。
……狭い鳥かごの中での良い話題提供係だ。
「──で、僕は午後から予定あるから問題を起こさないでね、面倒くさいし」
連絡事項を伝えられ、午後から居なくなるという話を聞いて。
というか悟の問題を起こすな、に伏黒が食いついた。
「いつも先生が問題起こしてません?」
「僕は良いの。最強故に」
「意味が分かりません」
そのやり取りを横目に見て。
……つまり、だ。緊急で体術が今日の午前中埋まる。
悟自身はあまり授業を教えない(呪術とかは教えてくれるけれど)=午前中鉢合わせしない=午後居ない…ホームルーム終わった後に悟がどっか行ったら治しちまえば良いのでは?
はっ!と気が付いて今度は計画通り…という笑みを零さないようにと口を一文字にするのをキープした。表に出してはいけない、悟られてはいけない。
「どったのハルカ、口内炎にでもなった?梅干し食べる?」
『なってねえよ?そしてなってたとしても梅干しあげるとか痛くなる方向にもってくつもりかな、それ』
きっと悟は私が計画をバレないようにしてる表情を見たんだろう。
それらを知らない虎杖がはい!と手を上げた。
「梅干しよりも……ここはポテトっしょ!」
「虎杖ィ!もうポテトと言うな!」
釘崎が放課後にジャンクフードを食べに行くという決心まで時間の問題でしょ、この調子だと。
連絡事項も雑談に変わってきた所でチャイムが鳴った。
「じゃあ、皆今日も一日がんば!」
ガラッ、と引き戸を開けて遠ざかる足音。
悟が教室を出た、良し!と着替える前にこそ、と治した。後は着替え持って更衣室で釘崎と着替えるだけよ!
完璧だと浮かれた私はにっこにこで釘崎の席に行く。
『釘崎、着替えに更衣室行くよ!』
「あれ?みたらい、あなた朝から体術嫌がって無かったっけ?ノリ良いじゃない」