第6章 "愛"も止まらない!
頭を抱えて洗脳されていく釘崎に、私と虎杖はアイコンタクトをとった。
"いける"
"あの呪文を言うか?"
そのまま一呼吸、吸い込んであのリズムを私達は口ずさむ。よくアイコンタクトだけで伝わったよ…。
『「ティロリ♪ティロリ♪ティロリ♪」』
「や・め・ろ!」
伏黒も結構ノッているようで。釘崎の脳内には今、ポテトで埋まっている事だろう。
くっくっく、と笑いながら、虎杖の追撃…"絶妙なる塩気"という単語に釘崎が頭を抱えぶんぶんと頭を振っている様子を眺めて居ると、足音が近付く気配を察知した。
私は慌てて椅子をガガガ…と引きずり、自分の机の前まで戻して座る。この位置からなら皆にも見えないだろう、と制服のファスナーは座ってからシャッ!と開けた。
虎杖も椅子を戻したんだろう、視界の外でガガッ、と音が聴こえたし。
そして入ってくる担任、悟。
今日も元気な28歳児、毎朝一発ネタを考えて教室にやって来てるに違いない、と頬杖をついて見上げた。
「おはようサンタマリア!みんな居るね、元気そうだね。新しい朝が来たね~!希望の朝~!」
アイマスク状態で元気そうな悟はこちらを見て"よし!"と指差し確認の様に声を上げた。ファスナー下げてるからだろうけど。
治せるけれど治したらマーキング着け直された上に増やされる恐怖。昨晩ひたすらに首も首筋も、うなじもデコルテもひたすらに赤い印の付けられた跡はきっと遠くからでも分かってしまう。
ファスナーを開けた今、防御壁のように襟を立てて皆から見えないようにちょいちょい直した。
伏黒の号令で起立礼着席、と簡単なホームルームが始まった。
……黒板に書かれているように今日は朝から体術、だそうで。2年生と合同らしい。
きっとそれを聞いた瞬間、私の目は曇っただろう。学生になる前は私服のパーカーで済ませていた体術の服装。学生となったからには、と通常のジャージを買ってきてる。フードとか顔がちょっと隠れたりとか出来ない、襟がそんな無いやつ。ジャージは自由だけれど、まさか購入時にキスマークを隠すために襟を高めにしたデザインだなんて購入理由にしていないし。
嗚呼、終わった。先輩方との邂逅、今日だなんて思ってなかった。最悪のファーストインパクトではないか、この新人は。