第6章 "愛"も止まらない!
45.
『おはよー…って、はあーっ!!?朝から体術ぅ!?』
たまに授業が変更する事がある。それが今日だとは。今日の私には隠したいものがあるというのにそれを隠せない体術が入るなんて誰が考えたのさ?
思わず叫んでしまった原因は黒板の大きな文字、"午前中体術"。
その声にビクゥ!と全身を強張らせて朝から私が驚き叫ぶ声に、感染する様に驚いた虎杖が椅子から転げ落ちた。
その椅子ごと倒れていく様子を伏黒と釘崎は眺めて何か言いそうな雰囲気であったけれど。
「痛ってぇ!」
『朝から騒いでめんご、擦りむいてるね……、ウン…治療しとくから…』
教室に入る前に、ジジッ、とチャックを上げて首筋とかを隠しておいた。悟はまだ来ないし直前に開ければ良いでしょ。悟に今見られているわけじゃないし。
って事で椅子ごと倒れた衝撃で手の甲を擦りむいた虎杖に触れて私は虎杖のダメージを私の式髪に回収しておいた。小さな怪我であった為に触れたのは2秒かそこらであったけれど。
そんなほいほいと気軽に使っている、自身の式髪の消費を釘崎は私の頭部を指差して心配している。
「昨日といい、あんたそんなに式髪使ってて良いの?結構白くなってるわよ?」
釘崎の言うことも最も。だって自分でわざわざ白に染めた2箇所の他にメッシュでも入れたかという程に目立つ白髪の毛束。まだ全体の半分とは言わないけれど式髪は使用中。
自分でも分かってる。でもこれでこれまでの血族がやらかしてきた、うっかりをしないように練習をしておきたい。
…という事で治療を終えた虎杖から離れ、自分の椅子を釘崎達の方に向けて座った。
『白い部分が多けりゃ呪力量が増えるから、これで反転術式を練習してバリエーションを増やそうかと』
あまり強くない分、アイデアでなんとかしないと。槍が出来たからなんとかの一つ覚え方式だと銛とか考えられるけれど。
また戦闘以外でも脚立にしたり、相手を捕獲したり術者の意思次第でなんとでもなる。
"怒髪天"の召喚した式髪は切られれば私からの呪力の供給がストップして消える。それを考慮して良い方法は無いかと時折ぼんやりと考えているけれど。
ファスナーがちゃんと上まで閉まっているかをもう一度確認するようにぎゅっと上げて、虎杖の方向を見た。