第6章 "愛"も止まらない!
44.
先に私は下着に部屋着と着替え終え、小型の鏡を小さな座卓に置いて保湿をする。
いつもなら浴室の隣…脱衣所というか洗面所で行うのだけれど、今は悟が浴室にいる。出るまでなら平気?いや、だって抜くって言ってたって事はそういう事してんでしょ。あの凶器というか狂気というか…そう、呪具!をなんかしらしてるんでしょ。音だとか声だとか聞くのは大変気まずい。
ぱしゃっ、と肌にかけてなじませていく化粧水。
次に私は乳液の容器を手に取ってキャップを外す。
……つまり、あの大きさがアレの時にアレするんでしょ?私はもんもんといつかは起きるイベントを想像して首を振った。少し濡れた髪が当たって痛い。そうだ、髪も乾かさないといけないんだった。乳液を手に保湿をしっかりとして、浴室などの現在は危険地帯となってる方向をチラ見する。
ドライヤーは洗面所。ボスの居る手前のゾーンだ。今取りに行くのも邪魔しちゃう…だろうし?
ガタガタと音がして、タオルを頭に掛けた悟がちょっと猫背でやってくる。片手にドライヤー…うん、ナイスです。
「疲れたから僕の髪……乾かして、ハルカ」
『はぁ…、何疲れてんのさ……』
ちら、と濡れた髪とタオルの隙間から見える空色は細められた。
喋らなければ今の悟は色気が色濃く出ていて、気を強く持たないと失神するほどに格好良い、とは思う。
けれど次に出る言葉はどうせ悟の事だ、下ネタだろうなーと思ったら案の定だった。
「ん?ナニってハルカをおかずにしたマスターベーションしてたんだけど」
『普通それをモロに言うか?もっとさ、こう…ボカしてくれない?聞いてるこっちが恥ずかしいを通り越して呆れるんだけれど?』
「いいじゃん、とりあえずすっきりしてきたからさー…ほら、やって!」
差し出されるドライヤーを受け取って、仕方ないな…と延長コードに繋げた。
私の側、座卓を肘置きにして床にあぐらをかいて座る悟にドライヤーを向けた。頭に掛けられたタオルを外してスイッチを入れる。
ふわふわじゃなくて今は濡れた犬だな、ブルブルしないからありがたい…と片手はドライヤー、もう片手は手ぐしで恋人の髪を乾かし始めた。