第6章 "愛"も止まらない!
この悟に効果音というか、表現をつけるとすれば、スンッ…という明らかにしょぼくれている男。
私の心の中でこの光景にタイトルを付けるとしたら。うーん、いつもの通学路に捨てられた子犬、といった感じ?
『……そういう顔しても駄目』
「……」
はぁー…、と悟はため息を吐いてこちらを見続けている。
私は脚をしっかり閉じ、両腕で胸元を必死で隠しながら半径1メートル内でしゃがみ込む悟に拒否をし続けた。
『駄目だかんねっ!絶対に!絶対に入らないんだから!』
───
─
『どうしてこうなった』
湯船に入り、洗い場に背を向けて自身の身体を抱きしめるようにして浸かった。
背後ではバシャバシャと身体を洗っている異性が居る。
どうして、なんて入りたい入らないの問答が続いた後に、悟が"僕を知る一番の方法がこれだ、昔から裸の付き合いって言うでしょ?"…だの"おばあちゃんで見てるじゃん!"だの"ふたりで入ればお湯が節約"だの、なんかかんや丸め込まれてこうなっている。
この状況がまだ表面上の恋人であればまだそこまで意識せずに、恋人でもないのになんで入らなきゃならないの?ってなってた、多分。でも今は互いに好きと言い合った、恋人。それで一緒にお風呂って。
心のなかで悲鳴をずっとあげながら出来るだけ湯船に浸かる。浴室内の空気になっておく。悟の背中は視界に入るけれど、私はその先の脱衣所に出られるドアを悲願するように見ている。ここから出して。
「洗い終わったよー、入るね!」
ぱしゃ、とやや狭めの湯船に片足が浸かるのを視界に入れたので、正反対を見る。見られたから見るとかそういうんじゃない。見ちゃいかんでしょ。
「ははっ!せめて僕側に背を向けるとかしなよ、気まずくない?それ」
『入浴剤とかそういう洒落たモン買ってないもん、まさか風呂場に近付くなっつって誰が入ってくるって予想出来るよ?』
ひとりだし、こんな事を想定してなくて入浴剤を買ってない。
でも今回の事があったので、悟が髪を洗ってる時に心に決めてる。にごり湯は常備しておこう、乱入対策の為に…とね。
悟は私のメッセージを送った件についてを目をぱちくりさせ、軽く笑った。
「え?アレ?押すなよ?絶対だぞ?のようなモンかと」
『んなわけあるか!』