第2章 視界から呪いへの鎹
声が大きくならないように気を付けながら私は聞き返した。質問タイムなんて待ってられない。
『そんなに……そんなに私が早く死ぬって言いたいの!?』
悟はとても甘ったるそうなコーヒーを飲み干し、カップをテーブルに置く。
そして頬杖を突いて、私の顔を覗き込むように言うのだ。
「だって、見えてないんでしょ?見えるハズなのに見えてない……いやきっと、自分にブレーキを掛けてるのか、脳が見える事を拒絶してるか……それとも誰かにわざわざ止められたか。呪いが見えればハルカちゃんがやられる前にやり返せて、身代わりも使わなくて良いのにねっ!」
『見えるはずなのに見えてない……
もしかして。もしかして私の母は…見えなくて、髪を真っ白にしてそれが原因で死んだって事?』
早く死んだ母。元気に見えたのに。
全てを理解出来なくても、小さなパーツが頭の中で組み上がっていく様に謎が消えていく。
うん、と頷いて更に付け加えられた。
悟は私の事を私以上に知っている。どうしてだか分からない。
「式髪の使用…白髪化で死んだのは確実だろうけれど、見えるか見えないかは流石に分からないなあ。ハルカちゃん、今恋人とか、結婚予定とかないでしょ?あっ、このまま口を挟まずに僕のターンでお願いね。
おばあちゃんは身代わりの代を抜けたのか、まだまだ死ぬまで戦ってるんだと思うんだけれど、現在の状況を見るに君が身代わりの代……、早く見えるようになって、身を守る方法を身に付けないと早急に春日一族の血が途絶える。戦う方法をキミが持ち合わせてないなら、武器を調達しないといけない」
『……つまり、私が祖母に会って、春日一族なのかを確認して、その…呪いってのか見えるようになんかして、戦うって事?』
「そういう事。じゃあお腹いっぱいだし外出ようか。春日家は遠いから新幹線だね~」
決定が早すぎる。食事だけだと思ったら、次はお出かけかぁ。
支払いをして、店の外に出て。いつもの休日よりもとても時が遅く流れているように感じた。
母の実家こと、京都にあるっていう祖母の家まで遠いから新幹線か。銀行で降ろさないといけないなぁ。思わぬ出費……バイトじゃなかったら、もっと稼げていただろうに。財布を手に、ぎゅっと力を入れる。
ん?バイトじゃなかったら……?