第2章 視界から呪いへの鎹
4.
『それで?その理由って何?』
食事が終わり皿を重ね、私は悟に改めて話しかけた。……お預け食らってかなり気になるし。
コーヒーに砂糖をドカドカ入れ、ティースプーンで掻き混ぜながら、んー?と声を漏らす悟。結構のんきである。
「まず、キミ自身が近くの呪いを誘き寄せるんだ。そして、夏場のさ……アレ、えっと、コンビニとかにぶら下がってる青いヤツあるじゃん?」
『……殺虫灯?』
「そう、殺虫灯。あれみたいに身に纏う呪力で殺してるんだ。きっと体力も呪力と一緒に消費されて……、だるくなったり、お腹減ったりするんじゃないの?
祓いきれない強さの呪い、呪霊だと、キミ自身に当たってしまえば髪が白くなる……、身代わりの銀糸っていう、一族の毛髪でやっつけてくれてんだよね。昨日、キミの家行ったら廃病院ばりにうじゃうじゃ居るんだもん、そりゃあ白髪化のペースも早くなるよね」
呪力だの呪霊…ってなんだろう。幽霊みたいなモンかなぁ。理解が出来ず口から、はあ、と返事が漏れた。
見えないモノ。スピリチュアルというかなんというか。何を質問しようか、纏めながら聞こうと思ったけれど、聞くべきことが多すぎる。お冷の入ったグラスをぼうっと見ていると、視界の端でコーヒーカップを持ち上げる動作。私もつられて視線を上げた。
「身代わりの銀糸…式髪、キミの髪が白くなったのは、身代わりをした後。つまりだけど、君の髪が全て真っ白になったら…」
『死ぬ、的な?』
コーヒーを呷ると、カタンとテーブルに置く音。私の質問に対してどういう答えが来るか待っていたから、それがやけに大きく聴こえた。
「当たり。キミの身体という本丸に攻め込まれてるからね。戦いに出ずにずっと攻撃を受け入れすぎればもっと色が白くなって最終的に死んじゃうよ?それもここ最近、呪霊が強くなってるから、何年…いや、何ヶ月持つか……」
えっ、なにそれ。
一昨日から随分と変な事を言ってる人だけれど、聞き捨てならない言葉だ。脳や臓器のような体の病気などではなく、髪が白くなって死ぬ、だなんて。そんな事あるわけ……、
──ああ…あったか。思い出すは大好きな母だ。