第5章 "好き"が止まらない!
棒立ちする釘崎。
悟はのれんを手の甲で持ち上げ、ドアを開けようかの所で止まっている。
その側にさくさくと進んでいく虎杖と伏黒。彼らには文句が無いみたいだ、さっさと悟の隣を抜けて引き戸を開け、店内からのとてもはつらつとした"いらっしゃいませー!"が聴こえてきた。
その元気な営業ボイスの後半をかき消す悟。
「えっ、ほら回らない寿司じゃん、銀座じゃん。僕はキミのリクエストに答えたんだぜ?それとも止めとく?普通のお寿司っていうかりっぱ寿司とか行くー?」
本当はまわらない寿司(握り)が良かったけれども!でもわざわざ専門店を作るレベルって事は美味しいに違いない。
先に入店して通りからはもう見えない虎杖と伏黒。そしてのれんを上げて待ってる悟。
私は固まる釘崎の背を片手で押した。
『……いや、食べる!ここらで専門店をやってるって事は相当美味しいやつじゃん!行くよ、釘崎!歩いて歩いて!』
ショックで固まる釘崎ではあったけれど。
座敷に案内され、メニューを見れば皆いつも通りになる。
私もメニュー表を持って見ていれば、特選海鮮ちらし、親子ちらし、魚卵づくし穴子にづけ、とろろ……ほーん、色々あるな、どうしよう。
一応寿司屋という事で握りも置いている。けど、盛り合わせ。
やっぱ相当"鮭が好き!"とか"イクラにとびっ子、ウニが好き!"ってなってなきゃここは特選海鮮ちらしだろうな。左隣の釘崎が、私が机に置いたメニュー表を一枚捲った。
さり気なく私の右に座る悟は私の右肩に手を乗っけてメニューを覗いているし、向かいの席では虎杖と伏黒がひとつのメニュー表を見て指差している。
「先生でかいの頼んで良い?この特上っての」
「どうぞどうぞ、You、食べちゃいなよ!」
虎杖は大きいサイズ頼むんか。そりゃあ食べ盛りだろうし。
食べるものも決まったので私もその流れで飲み物の許可を取ろう。
ぱら、ぱらぱら、と後半のページを開き、右隣を見る。
そこには目を惹くパッケージの写真。日本酒だ!
『み・ち・ざ・く・ら!……三千櫻、頼んで良い?限定だって…ほら……』
純米酒だ、期間限定でここにおいてあるらしい。
頼み込むと悟は口を尖らせながら腕でバツを作る。えっなんで!?
「ブー、駄目でーす!
……キミ今制服でしょ?世間的な目もあるからソフトドリンクにしなさい」