第41章 白銀の歪んだ呪いの鎹-Cursed clamp-
そう男の子のママは謝って、文句を言う男の子の手を引いていく。白い髪の大人と子供、男の子が少し離れた所で振り返って、何も言わずに前を向いて帰って……。
──ほら、場所が変わっても私なんかにお友達なんて出来やしないんだ。
しょんぼりする私をママは肩を温かい手で擦って、「今日はハルカの大好物を作ってあげるからっ」なんて元気づけようとしてくれたけれど……。
沈んだ気持ちでお家に帰って、明日に期待なんて持てやしなくて。
私の大好きな、ケチャップたくさんのオムライスがあまり美味しいって感じなくて、お風呂に入ってもすっきりとした気分になんて当然出来なくて……。
明日なんて来なけりゃいいのに。保育園なんて行きたくない、どうしたら行けなくなれるんだろう?そんな気持ちでお布団をかぶって私は眠りについた。
──"普通の人生を共に歩もう"
風の強い嵐の夜みたいな、真っ暗な夢の中で弾んだような嬉しそうな声の男の人が言っていた。
聴こえるのは男の人の声だけど、明かりもないのに泣きそうな顔の女の人が暗い中でも薄っすらと見えた。幽霊かもしれない、でも幽霊にしては悪いことをするようには見えなくて怖くは無い…。
男の人の声は朝を迎えるまでにもう一言、"これは次の人生の予約だよ、愛してるからオマエに頼んでるんだ、ハルカ"って私の名前を呼んでいて。
どんどん暗くなる世界で風の音もだんだんと聞こえなくなっていく…。
ぱち、と目を開ければ暗い世界なんてここにはない、いつもの朝。
……予約ってなんだろう?なんの事?
髪の毛ぼさぼさで起きた私はベッドの上で男の人の声を思い出して、ぼーっと意味を考えていた。
どすどすどす、ガチャ!と手荒にドアを空けるのはパパ。ベッドの上の私と目が合ったらにこ!と笑ってベッドの側までやって来て。
夢の中の出来事を考えていたのに。パパの登場でだんだんと中身を忘れて、ただ男の人の声がする夢を見たって事だけを記憶して。
どんなものを見たのか、なんて言われたのかぽんっ、と忘れちゃったから夢について考える理由が無くなっちゃった。